ベネゼーラへのCIAの工作

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「2期目」強行突入ベネズエラ「マドゥロ大統領」に立ちはだかる「国際包囲網」

1月10日、世界が注視する中で、ベネズエラのニコラス・マドゥロ政権が新たに2期目(任期2025年まで)に突入した。昨年5月、野党の統一候補者を排除して、前倒しで大統領選を強行し、再選。その結果を認めない国際社会に反発が広がる中、政権の国際孤立を際立たせる形での続投となった。

集まった顔ぶれ就任式に国家の元首が出席したのは、中南米ではボリビア(エボ・モラレス大統領)、ニカラグア(ダニエル・オルテガ大統領)、キューバ(ミゲル・ディアスカネル議長)、エルサルバドル(サルバドール・サンチェス大統領)の4カ国で、カリブではセントビンセントおよびグレナディーンとセントクリストファー・ネビスの2カ国。かつてのファラブンド・マルティ民族解放戦線の元司令官を大統領に担ぐエルサルバドル以外は、ベネズエラとキューバが主導してきた反米左派の「ボリバル同盟(ALBA)」の加盟国だ。

 域外からの代表は、ロシア(連邦議会副議長)、中国(農務大臣)、トルコ(副大統領)、イラン(国防大臣)、パレスチナ(外相)と、これまで反米左派の独裁化を強めるベネズエラとの関係を維持してきた国々に限られた。深まる孤立反対に、2期目のマドゥロ政権に対する国際包囲網は着実に広がっている。

前回の選挙結果の正当性を認めず、民主回復と人道支援の受け入れをベネズエラ政府に迫ってきた「リマグループ」の14カ国(ペルーはじめカナダやブラジル、メキシコなど)は、就任式に先立つ4日、ペルーの首都リマで外相会議を開催し、予想された通りマドゥロ大統領の2期目を承認しないとの声明を発表し、就任式には代表を送らないと決定した。

ただ、グループの主要メンバーであったメキシコは、アンドレス・マヌエル・ロペスオブラドル左派政権の誕生で方針転換を

し、声明には署名せず、14カ国で歩調を合わせてきた同グループから距離を置くことになった。就任式には、内政不干渉の立場からグループに参加していない左派政権のウルグアイと同様、現地の臨時代理大使を出席させる最小限の対応をとっている。

 またアメリカ、カナダを含む米州の地域協力体制の要「米州機構(OAS)」は、就任日の10日にワシントンの本部で臨時の常設

理事会を開催し、1月10日以降のマドゥロ政権の正当性を認めないとの決議を採択した。決議案はアルゼンチン、チリ、コロンビア、コスタリカ、ペルー、パラグアイのリマグループ6カ国とアメリカ政府によって提出され、賛成19、反対6、棄権8で採択された。

 マドゥロ政権に対しては、対話を通じ、国際監視の下で公正かつ自由が確保された新たな大統領選挙の実施、政治犯の釈放、人道支援の受け入れなどを求め、また加盟34カ国(冷戦下での除名が解除された後も復帰していないキューバを除く)に対しては、決議に基づき外交などの必要な措置をとり、早急にベネズエラの民主的秩序の回復につなげるよう要請している。なお、ここでもメキシコは棄権に回っている。

すでにリマグループ諸国は前回の選挙を受けて、大使召還などベネズエラとの外交関係を縮小してきたが、決議に賛成した各国は新たな外交措置を講ずる検討に入っており、パラグアイのマリオ・アブド・ベニテス政権は即日、大使館の閉鎖を宣言するに至った。

今後、外交関係の断絶を含め、ベネズエラの孤立がどこまで深まり、政権に具体的な圧力となって効いていくかが焦点である。

野党議長が「暫定大統領」宣言をしたがこうした政権に対する国際的圧力の高まりを受け、ベネズエラ国内でも反発が広がっている。 2015年の選挙以降、野党が多数を占める国会は、マドゥロ大統領の正当性を認めず、新たに議長に就任したフアン・グアイド氏が11日、政権移行に向けて一時的に暫定大統領に就任する用意があると宣言した。グアイド議長は、同時にマドゥロ大統領を「権力の簒奪者」と非難し、その正当性を認めない国際社会に謝意を述べるとともに、軍に対しては、憲法を順守し、政権に対して決起を呼びかける演説を行った。

マドゥロ政権は、国会の決議をことごとく無視して三権分立を崩し、新たに翼賛的な制憲議会の設置によって国会の権限を無力化してきたが、国会も昨年の大統領選挙の結果を認めておらず、大統領就任式の宣誓も憲法で定められた国会ではなく、最高裁で行われた経緯がある。

野党としては、政権の違憲性と、国会の持つ権力の正当性を国際社会に訴え、内外の支持を得ることで、マドゥロ政権後の民主化移行へのイニシアティブを示そうとしたのである。

1月5日、OASのルイス

・アルマグロ事務総長はグアイド氏が国会議長に選出されるにあたり、民主的立憲秩序と基本的人権の回復にあたってグアイド議長と国会の担う役割を支持する声明を発している。またアメリカ国務省も12日の声明

で、議長のイニシアティブを支持する姿勢を示した。

 だが、OASの決議では、国会に正当な権威を認めつつも、権力の移譲を求めるところまでは踏みこんではおらず、あくまでも国民対話を通じた和解に基づき、平和裏のうちに公平で自由な大統領選挙を新たに行うことを求めているにすぎない。いまだ加盟国に、国会議長を暫定大統領として認める政権はない。

軍事的な関与も辞さないアメリカまた、軍は政権にグリップされており、当面、軍部が政権に対し決起することは考えられない。弱体化した野党にとっては、国際社会の圧力と支援が最大の支えである。

一方、政権側は国内での有利な立場を活かし、再度、対話の姿勢を見せつつ、中国、ロシアなどの支援をテコに政権の延命を図ることになろう。

OAS決議は、話し合いによる自由公正な選挙のやり直しによって事態の解決を図ることを求め、軍事的な関与も辞さないとするアメリカ政府に楔を打つ形となっている。 米国のジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は、昨年11月のマイアミでの演説で、ベネズエラ、キューバ、ニカラグアを「専制のトロイカ」と呼び、「民主制度を毀損しており、市民に対する容赦ない暴力を許さない」とマドゥロ政権を厳しく非難。市民への抑圧には、キューバにもその責任があると断言した。

ベネズエラと国境を接し、100万人に達する難民を1国で抱えるコロンビアの右派・親米のイヴバン・ドゥケ政権と、「ブラジルのトランプ」こと極右のジャイール・ボルソナロ新政権は、トランプ政権とともに軍事的な関与を含め、連携して圧力を加えていくことになるだろう。

こうした軍事的関与の選択肢を抑えながら、あくまでも圧力と交渉による危機の解決に力点を置くリマグループの他の国々の外交努力が試されている。逆に独裁政権がOAS決議に応えず、暴力的に政権にしがみつくだけであれば、破綻国家の行く末は知れたものであり、他の選択肢の可能性を自ら招くことになるであろう。

(遅野井 茂雄)

 

 

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【2月21日配信】内藤陽介の世界を読む「ベネズエラ専制のトロイカ」かしわもち【チャンネルくらら】

 

 

 

 

 

南米のベネズエラでは、経済破綻の危機が高まっている。

 

南米のベネズエラでは、経済破綻の危機が高まっている。原油価格の下落で物価が高騰し、食料品や医療品の不足が市民生活に深刻な影響を及ぼしている。対外債務の返済は完全に行き詰まり、デフォルト(債務不履行)の危機も迫る。反米姿勢を強め、社会主義的政策を進めていたウゴ・チャベス前大統領を受け継ぎ、ニコラス・マドゥロ大統領には罷免の声が高まっている。

ベネズエラを襲っている経済的・政治的危機について、ハフポストUS版はニューヨーク大学准教授のアレハンドロ・ベラスコ氏に話を伺った。

原油価格の低迷で、ベネズエラでは経済的な混乱が起こった。状況は悪化し、電気を節約するために政府機関の多くが週2日しか開いていない状態までになっている。食糧不足によって、基本的な必需品を求めて人々が長い列をなしており、旱魃が起こったことで、水も希少となり、状況はさらに悪化している。

多くの都市で、抗議の声をあげる人々が治安部隊と衝突している。政府に対策を求め、四面楚歌の状態にあるニコラス・マドゥロ大統領を罷免する国民投票の実施を要求している。長期政権を築いたウゴ・チャベス前大統領の後継者、マドゥロ現大統領は反対派が勢力を大きく増す中で政権運営を担っており、チャベス前大統領のような人気を得られずにいる。5月、マドゥロ大統領は罷免を回避するため5月13日に非常事態宣言を発令したが、彼の政治的な命運は不確かなままだ。

 

ベネズエラは過去に経済危機を何度となく経験してきましたが、どうして現在の危機状態はこれほどまで悪化したのでしょうか?

歴史的な理由と、より現代的な理由の両方があります。歴史的で、より構造的な理由は、ベネズエラが唯一の資源に長きにわたって依存してきたことと関係があります。その資源とは石油です。

石油ブームが起こると、ベネズエラ政府は積極的に支出しますが、こうした支出は国内で生産的な産業を生み出しませんでした。つまり、ベネズエラは輸入に依存するようになったのです。石油マネーは流れ込んできており、欲しいものは何でも輸入できましたが、その石油マネーが止まると、モノを買う元手が小さくなってしまうのです。

この数十年間、ベネズエラはこのパターンを繰り返し経験しました。チャベスが大統領だった10年間にもこうした経済危機が起きました。その頃、石油価格は非常に高かったのですが、国内の組織には投資がほぼ行われず、収入に強く依存して輸入品を買っていました。そのため、ベネズエラは自立する能力を失う結果となったのです。

2つ目の理由はより現代的です。チャベスとマドゥロが大統領を務めた間に、ベネズエラは石油国家としての性質をかなり強めていきました。経済の大きな生産部門を強制収用してきたからです。生産部門は国営企業や労働者所有の企業から生まれるという、社会主義的な考えがありました。問題なのは、こうした企業が国営企業であっても、より利益追求型の国外企業と競争していたということです。

3つ目の要因は、なぜ危機がこれほどまで深刻なのかをこの時点で説明する上でおそらく最も重要だろうと思います。それは通貨管理制度です。通貨管理は2003年に、チャベス大統領を失脚させることを目的に石油産業がストライキを起こした後に導入されました。通貨管理は通常、長くとも1年から2年程度を実行期間とするものです。というのも、この通貨管理を行うと腐敗につながるからです。そして、腐敗が実際に起こりました。生産する意欲を削ぎ、モノの買い溜めが氾濫し、希少となったモノを再販売するようになったのです。

 

現在、食糧不足と政府機関の閉鎖で、ベネズエラの人々にはどのような影響があるのでしょうか?

もっとも劇的な影響は、基本的に何も手に入らないことです。小麦から製造の手間がかかる製品まで、何もかもが手に入らなくなりました。その結果、多くの人が行列をつくり、モノを求めます。

一方で、闇市場での取引が蔓延します。闇市場を生み出した原因は通貨管理制度です。モノ不足に加え、極端に高騰した闇市場の物価が、人々の生活を直撃しています。

他にも影響がありますよね。薬品や、病院用の部品も不足しています。

もう1つ付け加えると、ベネズエラの異なる層の人々に違った形で影響が出ています。ドルが手に入るなら、闇市場のモノを手に入れることができます、街の中でより富裕な場所にあるお店で買うこともできます。こうしたお店の製品の供給状態はまだ良い方です。

他の製品の多くは政府が価格統制しており、手に入れるのは困難になっています。手に入れられた場合でも、配給が厳しく統制されています。国民IDカードの番号に基づいて決められた日に購入を行わないといけません。この配給プロセスに応じて、人々は毎日の生活を調整するようになっています。

 

混乱は一様ではないでしょうし、階層の分断も影響を与えていると思いますが、ベネズエラの人々はこの危機的状態の原因を何だと思っているのでしょうか?

捉え方は一様ではありません。マドゥロ政権を拒否する声はかなり広がっていますが、これは主に危機が深刻だからです。人々はマドゥロ大統領を批判していますが、批判する理由は様々です。

過去17年をどう評価するか、その見方はまだ大きく二極化しています。とりわけ、チャベス大統領時代についてはとりわけ評価が分かれています。人々はこの二極化した見方で、危機を受け止めています。

はっきりさせておきたいのですが、確かに現在の政権は支持されていません。この点では、二極化はないように思いがちです。しかし、二極化が起きているのは、人々が何を危機の原因と捉えているかによって変わってくるからです。

チャベス大統領を支持した「チャビスタ」の人々がマドゥロ大統領を批判する背景には、マドゥロ大統領が実施した政策によって大統領が力を持てなかったことがあります。思想的にチャベス大統領を信奉していた人々は、マドゥロ大統領の立ち位置が十分に左派的でなく、社会主義的でもないという理由から、現大統領を批判しています。そして、チャベス政権にずっと反対してきた人も数多くいます。

人々が何を批判しているかについては、一律に説明できません。おおむね政府を強く批判しているのです。

 

マドゥロ政権はこの危機を乗り切ると思いますか?

乗り切るかどうかのポイントは、2018年までの任期を全うできるかどうかでしょう。乗り切れない方にかけるのが安全かと思いますが、そうすると次の質問は「どういった状況でマドゥロ政権が終焉するのか?」でしょう。私の直感だと、石油価格が少し上昇しているので、状況は悪いものの、この危機はある程度踊り場に達した感があります。

これでチャビスタたちの政権は時間を稼げています。チャビスタたちは2016年よりも先へと罷免に関する国民投票を遅らせようとしています。この先延ばし戦略が重要な意味を持つのは、もし罷免の国民投票が2016年12月よりも先になると、副大統領が任期の残りを埋める必要があるからです。

マドゥロ大統領は乗り切れないかもしれませんが、チャベス主義が生き延びないということではありません。

政権が反対派勢力に対して活用できる大きなテコは、権力の座に居続けることです。これは少し逆説的ですが。反対派勢力は力を持ち続けるためには、政権内に誰かが入っていないといけません。しかし、政権に加わっていると今後の政策に対して批判を受けるのです。ベネズエラの経済を回復させるためには、痛みを伴う難しい政策を導入することになるでしょう。

私の直感だと、チャビスタの会派の中には知恵を絞って、反対派と交渉をしている派閥もあるでしょう。そうした会派はチャビスタの間でも不人気のマドゥロを喜んで大統領の座から外すでしょう。したがって、副大統領が残り、静かに権力が移行する期間となるでしょう。何らかの政策が実施され、反対派に権力が移るのですが、一方で、誰の顔にも泥が塗られないのです。

今後どうなるかについて、私が考えていることはこんなことです。マドゥロ大統領は乗り切れないかもしれませんが、チャベス主義が生き延びないということではありません。

 

石油利権とCIA

 

2013年のチャベス大統領の死後、親米反政府勢力を指図して転覆策動を図ってきた。世界一の原油埋蔵量を有するベネズエラ経済の崩壊を狙って、中東諸国を巻き添えにしながら原油価格の暴落を仕掛けてきたし、そのことによる政情不安につけ込む形で、目下、マドゥロ政府の倒壊を企む動きが顕在化している。アメリカがベネズエラに対してなにをしてきたか。

 

チャベス前政府は新自由主義にもとづくアメリカの支配に反撃して主権を回復し、労働者や勤労人民のための諸改革をおこなってきたことで知られている。2013年のチャベス大統領の死後、それを引き継ぐマドゥロ政府に対し、アメリカは新自由主義政策による支配と石油資源の略奪を狙ってさまざまな攪乱・干渉をおこなってきたが、制憲議会選挙はこの妨害を打ち返す意味合いを持った。

 

制憲議会選挙は親米野党勢力がボイコットし、あるいは全国150カ所の投票所を襲撃して投票できなくするなどの暴力的な妨害や投票行動への恫喝が加わるなかで、それでも有権者の41・53%を占める808万9000人が投票した。そして6120人が立候補し、545人の制憲議会議員が選出された。

8月4日に開かれた初の制憲議会で、議長は「制憲議会は祖国をみずからのものにし、新自由主義を復活させようと企む国内少数派による深刻な紛争のなかから生まれた。制憲議会は暗黒の右翼独裁勢力にうち勝った」と表明した。制憲議会は発足後、ただちに親米野党勢力が多数を占める国会の立法権を剥奪した。

 

度重なる転覆策動    原油価格の下落も画策

 

ベネズエラを見てみると、1999年にアメリカの新自由主義支配から主権の回復を掲げて立ち上がり、チャベス大統領が就任した。当時のアメリカ・ブッシュ政府は3年後の2002年にチャベス政府打倒のクーデターを計画する。これは失敗するが、アメリカの介入はそれで終わらなかった。アメリカがベネズエラに照準をあてて介入する主要な要因は、世界一の埋蔵量のある石油と世界第4位のガスを狙っているからにほかならない。アメリカは2006年にもクーデターを計画している。「親米民主的機関」に湯水のごとく資金援助し、チャベスの政治的拠点を切り崩し、チャベス派勢力を分断し、アメリカ企業を保護し、チャベスを国際的に孤立させる、といった計画を立てていたことも暴露された。

アメリカ支配層は中南米諸国でアメリカの手先を育成するため、1946年にパナマにSOA(現在の名称はWHINSEC=西半球安全保障協力研究所)を設立した。対反乱技術、狙撃訓練、ゲリラ戦、心理戦、軍事情報活動、尋問手法などの訓練を実施するための機関で、1984年にパナマから追い出され、米国ジョージア州に移動して同様の活動をおこなっている。

第2次大戦後に民主化の波が中南米にも押し寄せるが、それをアメリカはクーデターや軍事侵攻によって力ずくでつぶしてきた。キューバだけでなく、1954年のグアテマラ、64年のブラジル、71年のボリビア、73年のチリがそうであったし、現在もブラジル、アルゼンチン、ベネズエラなどで政権転覆をしかけている。こうした鋭い矛盾関係が、アメリカの軍事介入を拒否し、平和的な手段で問題を解決することを選択する力となっている。

1999年にベネズエラでボリバル革命に人人が立ち上がって以来、中南米地域でボリバル革命の影響は拡大し、アメリカの支配力は弱体化している。新自由主義政策に従属するのではなく、地域統合によって民族主権を回復し、独立を勝ちとる勢力が台頭し、中南米においてはアメリカを排除することが地域の利益につながるということが共通理解となって広がっている。

そのもとで、アメリカは中南米諸国での新自由主義復活のためにますます巨額の国家予算をつぎこみ、各国で反政府勢力を後押しして干渉を強めている。「環境開発」「人権の擁護」「民主主義の強化」などの旗を掲げて親米勢力にドルを支援し、アメリカの政策から逸脱した国国の政治的な出来事に頻繁に介入している。「米国国際開発庁(USAID、1960年代から開始)」に加えて「全米民主主義基金(NED)」、あるいは国際事件のための「全米民主主義機構(NDI)」「共和党国際研究所(IRI)」などを通じて、数千万㌦を親米勢力に支援しているとされている。全米民主主義基金(NED)は1982年11月に設立された。基金の目的は反共産主義と反社会主義である。現在国務省のもとで割り当てられる年間予算は1億3200万㌦をこえる。NEDは世界の70カ国以上で活動しているが、中南米ではベネズエラにおける資金提供が突出している。

2002年以降、中南米ではアメリカが糸を引くNGOの数が目に見えて増大しており、ベネズエラにはとくに介入が激しい。USAIDとNEDが単独で1億㌦を投資し、親米野党勢力や300をこえる新しい組織をつくるために使われている。たとえばベネズエラではステアと呼ばれるNGOが2002年のクーデターに直接参加していたが、NEDから数万㌦を受けとっていたことが発覚した。こうした資金が、石油価格暴落による統治の揺らぎに効果的に作用して、目下、親米野党勢力が反政府活動を扇動し、内部から転覆策動を仕掛けて反米政府を揺さぶっている。

ブッシュのベネズエラ転覆政策を引き継いだオバマ政府は2015年、ベネズエラを「米国の安全保障にとって重大な脅威」と位置づけ、マイアミに司令部を置く米南方軍を中心にクーデター計画を練ってきた。そして、当時の南方軍司令官であったジョン・ケリーがトランプ政府の首席補佐官に就任している。

アメリカの目的は、政府転覆によって権力を掌握して新自由主義政策を復活させ、石油やガス資源を略奪するとともに、多国籍企業とくにアメリカ企業が利益を得るために国有財産の民営化をはかることにある。キューバと並んで近年は反米の旗手として台頭してきたベネズエラだが、これを徹底的に叩いて反米政府を転覆させることが、その他の中南米諸国への見せしめにもなる関係だ。

 

この数年、ベネズエラの経済を揺さぶる大きな要因となったのは、石油価格の大幅な下落である。CIAは世界有数の産油国であるサウジアラビアやクウェート、イラクなどに過剰な生産増加政策をとらせ、世界的に過剰供給状態をつくり、石油価格の下落を操作した。その結果、中東の産油国もサウジアラビアを筆頭に財政危機を迎えたが、輸出の9割以上を原油に依存するベネズエラでも経済危機は深刻化した。

 

2016年のベネズエラの原油価格は1バレル=24㌦と2014年の3分の1以下に下落した。15年1~9月の経常収支は130億㌦の赤字に転落し、15年は同国の歳入は70%も減少した。チャベス大統領は、原油収入を元手に低所得者層への無料診療所や無償住宅建設などの福祉政策を充実させてきた。だが、原油価格下落のもとで経済危機は深刻化し、対外債務は膨らみ、15年9月時点で対外債務残高は1388億㌦と前年同期を5%上回った。

この苦境のもとで、親米野党はIMF(国際通貨基金)の介入による対外債務の借り換えを主張してきた。ベネズエラは04年を最後にIMFの介入を拒否しているが、野党勢力は経済危機のもとで長年敵対関係にあるアメリカやその手先であるIMFとの対話を進める方向を推進した。IMFが財政破綻の各国に「救世主」のような顔をして乗り込み、財政援助と引き替えに市場開放を迫り、米多国籍企業や金融資本が食い物にしていく構造は、アジア通貨危機やアルゼンチンの破綻、ギリシャ破綻を見るまでもなく、既に嫌というほど見てきた光景である。このアメリカの世界支配を担う急先鋒の軍門に下るか否かは、ベネズエラにとってその主権がどうなるのかも含めてゆるがせにできない問題といえる。

 

 

80年代からの経験     新自由主義に反撃機運

 

中南米諸国はアメリカが80年代初めから90年代にかけて新自由主義を先行して実施してきた地域である。80年代初めに債務危機が爆発し、地域全体の累積債務が膨脹した。累積債務危機からの脱出策として、アメリカがIMFや世界銀行を通じて押しつけてきたのが、構造調整計画と呼ばれる新自由主義政策である。その結果、中南米諸国は国民経済は破壊され、失業者は増大し、賃金は低下、高インフレのもとで貧困化は急速に進んだ。

80年代から20年以上にわたりアメリカ主導の新自由主義のもとで苦難を押しつけられた中南米諸国では、2000年代に入って反撃が始まった。その端緒を切り開いたのが1999年ベネズエラのチャベス政府誕生だった。

 チャベスは中南米の解放と統合を掲げ、アメリカの支配からの独立、新自由主義反対、富の平等な分配を訴え、貧困層への福祉政策を充実させた。教育予算を倍加し、貧困層の児童の就学や無料給食を保障した。また公共投資を拡大して雇用を拡大させ、多国籍企業から農地を接収して農民に分配した。また、05年にはアメリカとの軍事的な関係も断ち、軍事顧問団の受け入れを中止した。

ベネズエラに続いてブラジル、エクアドル、アルゼンチン、パラグアイ、ボリビア、ウルグアイなどで新自由主義を支持する親米政府が打倒され、アメリカから独立した政府が次次と誕生した。ベネズエラのチャベスがキューバのカストロと接近し、これらの国国が中南米諸国の統合やアメリカ支配からの脱却へと進んでいくのに対して、これを全力で阻止して、アメリカの「裏庭」として隷属の鎖につなごうとする力が激突している。ベネズエラを巡る矛盾の根底に横たわっているのは、マドゥロの資質であるとか、制憲議会の善し悪しといった部分の問題ではない。

 アメリカ政府がベネズエラに対して執拗に経済的締め付けを強め、軍事的な脅しをかけて政府転覆を策動するのは、豊富な石油資源を狙っていることと同時に、ベネズエラが中南米地域において反米を貫き、新自由主義政策に反対する中心的な存在だからにほかならない。米多国籍企業や金融資本による搾取や社会の私物化を拒否する中心軸になっているからである。

パクスアメリカーナが崩壊しつつあるなかで、それに抗うかのようにアメリカの狂暴さが増している。米国内を貧乏人だらけにした結果、市場は早くから狭隘化して頭打ちとなり、終いには消費の先取りであるサブプライムのようなインチキ証券をひねり出したが、その金融工学も世界中を巻き込んでパンクした。こうして世界中を搾取し続けるしか生き残りの道がないことに狂暴さの原因がある。しかし同時に、傲慢なる抑圧支配を断ち切り、民族の独立を求める世論が中南米地域全体に広がっており、植民地扱いを拒み、武力攻撃を許さない力も強まっている。

中東、東アジアと同じように、中南米でも抜き差しならない緊張感を伴いながら反米闘争が激化し、アメリカの孤立化が進行している。

 

チャベス前大統領の反米・反新自由主義路線を踏襲するマドゥロ大統領が再選したことに反発。「不当に当選した」「不正なマフィア国家だ」と主張して承認せず、アメリカに忠実なグアイド国会議長を暫定大統領としてでっち上げた。そしてベネズエラの収入源である石油取引を停止する経済制裁を加えて、国内経済を崩壊状態に追い込み、米軍派遣までちらつかせて現マドゥロ政府退陣を迫っている。一主権国家であるベネズエラの大統領を、アメリカが力ずくで勝手に変えようとする異常きわまる「内政干渉」が顕在化している。

米政府は1月28日、ベネズエラの国営石油会社に対し、アメリカへの石油輸出を禁止し、米国内の資産を凍結する経済制裁を科したと発表した。アメリカが二期目の大統領として認めていないマドゥロ政府最大の収入源を絶ち、退陣圧力をかけることが狙いだ。原油の確認埋蔵量世界一を誇るベネズエラは石油輸出が唯一の外貨獲得源で、アメリカは最大の輸出先である。これを遮断することで、ベネズエラの年間約110億㌦(約1兆2000億円)もの輸出収入を失わせ、さらに70億㌦(約7700億円)の資産も凍結し、大打撃を与えようとしている。

ベネズエラではチャベス前大統領の死によって2013年4月にマドゥロ政府が発足したが、それ以後、欧米諸国から陰に陽に加わる退陣圧力がエスカレートした。そのなかで原油価格が低迷し、経済は破綻状態になり、昨年のインフレ率は約170万%に達した。物価高や物不足のなかで国民は配給に長蛇の列を作り、捨ててあるゴミ袋から食料を調達するほど貧困化が進んでいる。このベネズエラ国民の困難を助けるのではなく利用し、更なる「兵糧攻め」で巻き起こる批判の矛先をマドゥロ政府に集中させ、親米政府樹立を狙っているのがアメリカだ。

今回の制裁についてアメリカ側は「制裁を解除して欲しければ、腐敗根絶にとりくむと明言しているグアイド暫定大統領の管轄下に入ることだ」(ムニューシン米財務長官)と明言した。ボルトン大統領補佐官(安全保障担当)は「ベネズエラの安定と民主主義はアメリカの国益に通じる」「すべての選択肢はテーブルにある」とのべ、軍事介入も辞さない姿勢を示した。米メディアは同補佐官が「コロンビア(ベネズエラの隣接国)へ米兵5000人」と走り書きしたノートを持っていたとも報じている。

ポンペオ米国務長官は国連安保理の緊急会合で「すべての国はどちらにつくのか決めるときだ。自由の部隊を支えるか、それとも暴力集団と結託するかだ」とのべ敵意をむき出しにした。イギリスやオーストラリア、イスラエルなど親米諸国もアメリカの主張に同調している。

他方、ベネズエラ側は「大統領選を望む帝国主義者たちには2025年を待ってもらおう」(マドゥロ大統領)、「子どもじみている」(アレサ外相)と猛反発している。中国やロシアが「外国への介入だ」と非難したほか、北大西洋条約機構(NATO)加盟国のトルコも「われわれは世界のどこであれ、クーデターを企てる側の味方はしない」と表明。南アフリカが「他国の影響下で解決されるべきではない」と指摘し、EU加盟国のギリシャも「正当な大統領はマドゥロ」との立場をとっている。

ベネズエラでは大統領選で再選されたマドゥロ大統領が1月10日に二期目をスタートさせた。しかし野党が多数を占める国会は「選挙の正当性がない」と大統領再任を認めなかった。「有力な野党政治家が排除されたまま実施された」「大統領は空位だ」と主張している。

 

そして「大統領不在時は国会議長が職務を代行する」という憲法規定に則って、反マドゥロ派のグアイド国会議長が暫定大統領への就任を宣言(1月26日)した。するとアメリカやカナダなどの親米国がすぐさまグアイド国会議長を大統領として承認。その2日後にアメリカが経済制裁で援護射撃に動いている。米メディアはグアイド国会議長が昨年末、秘密裏にワシントンを訪れ、アメリカの支持をとりつけていたことも報じている。グアイド国会議長は、アメリカと連携した外圧の強化、反政府デモなどの世論扇動、軍隊の切り崩しに動いている。

他方、ベネズエラ最高裁判所は「他国による内政干渉にかかわった疑いがある」として1月29日にグアイド国会議長の予備的捜査を検察に許可した。するとボルトン米大統領補佐官がツイッターに「グアイド氏を傷つけたり民主主義の転覆を試みたりすれば深刻な結果を招く」と書き込んでいる。こうした一連の事実はマドゥロ政府転覆を狙う黒幕がアメリカであることを示している。

 

ベネズエラでは1958年に軍事政府から民主化して以後、1990年代初めまで民主行動党(AD)とキリスト教社会党(COPEI)による二大政党制が継続した。しかしこの二大政党は発足当初から政治的密約であるプント・フィホ協定を結び、選挙や重要施策をめぐって、必要なときはいつでも結託することをとり決めていた。そのため政治家や軍高官の汚職事件が頻発した。

 

また1970年代までは石油開発や工業化政策で、右肩上がりの経済成長が続いたが、1980年代には一転して失速した。一人当りの国内総生産(GDP)は1983年をピークに急落し、90年代末には30年前の水準に落ち込んだ。中間層の所得が低下して貧困層が拡大し所得格差が拡大した。失業者が増え、道ばたで物を売ったり、家政婦など日雇いのような職業で生計を立てる人が増えた。

 

このなかで1989年に登場したペレス政府が押し進めたのが国際通貨基金(IMF)の指図に基づく新自由主義経済政策だった。「インフレ抑制」を掲げて価格規制を廃止し、公共料金の引き上げ、国内ガソリン価格の引き上げ、各種補助金の縮小・廃止、付加価値税の導入を問答無用で実施した。バスなど公共運賃の引き上げが引き金となって国民の怒りが爆発し、1000人をこす犠牲者を出したカラカソ大暴動も発生した。

 

そのなかで1992年には新自由主義政策を批判したチャベスを中心とする若手軍人が主導しペレス政府打倒のクーデターを起こし、数カ月後には別の軍人が2回目のクーデターを起こした。この行動はどちらも失敗に終わったが、全国で新自由主義政策反対の抗議行動が拡大した。翌93年にはペレス大統領を辞任に追い込み、94年にはプント・フィホ協定を結んだ二大政党以外の候補が大統領選に勝利し、新自由主義政策反対を掲げるカルデラ政府が発足した。

 

そして1998年に発足したチャベス政府は新自由主義政策と真反対の政策を推進した。「経済開発より社会開発の重視」を掲げ、豊富な石油収入を原資に、道路・鉄道などの都市インフラの整備、住宅建設などの公共投資に力を注いだ。1990年代に進んだ民営化の流れを逆行させ、食品流通、農業、製造業、観光業、航空業、公的金融機関など国営企業を多数新設した。失業対策では企業に解雇禁止措置を設けた。低所得者向けの住宅建設を進め、食品など基礎生活物資を低価格で提供するためにメルカルと呼ばれる国営流通・小売企業を設立した。

 

こうした国内施策を基盤にしてベネズエラは、アメリカによる反新自由主義施策をはね返す中南米の拠点になっていった。現在のマドゥロ大統領はこのチャベスが進めた施策を基本的に踏襲してきた。そのためアメリカはマドゥロ政府を目の敵にして退陣に追い込もうとしている。

 

この問題はアメリカにつくか、それ以外の国につくかというような問題ではない。米トランプ政府の介入は「アメリカのいうことを聞かないから、アメリカのいうことを聞く大統領にかえよ」というものであり、「一主権国家の内政や政治体制はその国の国民が決める」という民主主義の原則を否定する行為である。「一国の内政問題はそれぞれの国家の意思によって決められるべきで、他国が干渉してはならない」というのは国際法上の原則であり、国連憲章でも「内政不干渉の原則」を明記している。

 

長きにわたって米国の「裏庭」といわれ、欧米の植民地支配に晒されてきた中南米において、新自由主義改革による収奪を拒否して政治・経済の自立を目指した「ボリバル革命」の成果を潰し、ふたたび対米従属へと逆戻りさせる動きがあらわれている。自国に従わないものには問答無用の制裁を課し、みずから困窮状態を作りながら「人道」を掲げて政権転覆を謀るという手口であり、事態がどのように推移するにせよ、そのなりふり構わぬ内政干渉への南米諸国の反発と国際的な批判は強まらざるを得ない。

ベネズエラでは、反植民地政策を実行したチャベス大統領が死去(2013年3月)して以降、後継者であるニコラス・マドゥロ大統領が「21世紀型の社会主義」を掲げて国政の舵をとってきたが、米国の経済制裁を受けて国内経済は悪化の一途をたどってきた。

 

その大きな引き金になったのが原油価格の暴落だ。現在、ベネズエラの原油確認埋蔵量は、サウジアラビアを抜いて世界最大規模を誇っている。

 

1920年、オリノコ油田が発見されたことによって石油資源は外貨を稼ぐうえでの中心産業となったが、その収益の多くはベネズエラ石油公社(PDVSA)を操る寡頭支配勢力とその周囲をとり巻く中間層が独占し、国内で75%を占める貧困層の生活は貧しいままに置かれた。

改革によって米石油メジャーの直接支配は排除されたものの、その後も蔓延する汚職と利権の拡大に国民の反感は高まり、1998年、史上最高の得票で大統領に就任したチャベスは、この石油利権にたかる利権構造を一掃し、収益の多くを医療や教育の無償化、社会保障の拡充、農地改革などの貧困層対策に注ぐ政策を進めた。2007年には100㌦を超えて高騰する原油価格を追い風にして、石油メジャーが介入を狙ってきたPDVSAをはじめとする主要産業の国有化に踏み切った。

 

国際的には、米国が覇権拡大の道具としてきた新自由主義にもとづく米州自由貿易地域(FTAA)や国際通貨基金(IMF)に対抗し、米州ボリバリアーナ対抗政策(ALBA)を中心にした経済協定をキューバやボリビアと結んで新たな貿易圏の確立を目指し、石油をキューバに好条件に輸出するかわりに医師や教師などの人材を導入して国内改革にも力を入れた。2000年代にはブラジル、エクアドル、アルゼンチン、パラグアイなど中南米各国に続続と左派政権が生まれ、南米12カ国の政治統合を進める南米諸国連合の結成にも繋がった。

経済力の弱いカリブ海と中米の国国との間で「カリブ石油協力体制」を発足し、2006年には、ブラジルアルゼンチンボリビアとともに、ベネズエラの石油や天然ガスを将来的に南米南部にまで送るパイプライン建設計画を打ち出してエネルギー統合を進め、欧米の石油メジャーの支配から脱却する道を強めた。これらの改革は、キューバを除くほとんどの国で、植民地時代の寡頭支配が続いてきた中南米の歴史的な要求を反映して推し進められたものといえる。

自国の覇権を脅かすこれらの動きを憎悪する米国は、ベネズエラ国内の旧支配勢力と結託して過去21年間に6回の大統領選挙に対抗馬を立てたものの一度も勝つことができず、2002年には軍の一部によるクーデターをけしかけてチャベスを拘束したり、石油公社のゼネストを仕掛けるなど干渉を強め、昨年8月にはドローン爆弾によるマドゥロ大統領の暗殺未遂事件まで起こした。

 

現在、急激に進んでいる原油安も制裁措置の一環といえる。投機マネーが暴れ回る原油先物市場は、ベネズエラなどが加盟するOPEC(石油輸出国機構)の価格支配力はすでに失われ、その価格はエクソン・モービルをはじめ原油市場のシェアを寡占している石油メジャー(大手6社のうち3社が米企業)と巨額の余剰マネーを握る投機筋が操作するものとなっている。急激に進んだ原油安は、これらの投機マネーが原油市場から一斉に引き揚げられたことを意味しており、米国内でのシェールオイル増産とあわせて、ベネズエラや中東で反米の旗を振るイランなどの産油国経済を揺さぶるものとなった。

石油収益に依存してきたベネズエラにとって原油価格の暴落は大打撃となり、デフォルト(債務不履行)寸前になるほど国内経済は危機に直面した。さらに米国政府は、ベネズエラへの制裁を強め、経済の支柱である国営石油公社PDVSAを標的にした経済制裁を発動。同社による石油の輸出を禁じ、米国内の資産を凍結した。それによってベネズエラは年間110億㌦(約1兆2000億円)の輸出収入を失い、70億㌦(約7700億円)もの資産が凍結された。ボルトン米大統領補佐官は、米国以外の第3国にもベネズエラ産の原油の取引をしないよう働きかけ、金融大手もあいついでPDVSA債権の取引停止に踏み切った。

ベネズエラ産の原油は硫黄分の多い重質油であるため、米国から輸入するナフサを加えて希釈しなければ製品化できないが、米国内の資産凍結によって輸入できず石油生産そのものが滞る事態となった。ラテンアメリカ地政学戦略センターは、これら制裁によってベネズエラが受けた損失は、2013年~17年で3500億㌦(約38兆5000億円)に上ると発表している。制裁と同時に米国の石油メジャーが、ベネズエラが保有するカリブ海の石油精製施設や輸送施設をあいついで封鎖、買収したことも指摘されている。

 

制裁による物資不足と、自国通貨の価値を裏付ける石油の生産ができないなかで、ベネズエラ国内では物価高騰にともなうハイパーインフレが進行し、1月の物価上昇率が268万%にまで上った。年内には1000万%を超えるといわれ、国民は食料や医療品などの生活必需品も手に入らず、300万人が国外に脱出する事態にもなっている。米国政府は、これをチャベスやマドゥロ政府が進めた「反米社会主義」政策や、貧困層を救済する「バラ撒き」の結果であるとして批判を画一化し、日本の商業メディアもこれに追従しているが、そこに追い込んだ米国の関与を見過ごすわけにはいかない。ベネズエラ国内で起きている抗議デモは、チャベス以来の改革を否定するものでも、米国の介入を支持するものでもなく、むしろマドゥロ政府がこのような外圧の介入に有効に対抗できていないことに対する反発が大勢を占めていると現地のジャーナリストがのべている。

 

白々しい内政干渉

 

みずから作り出した混乱につけ込んでさらに介入を強めるトランプ米政府は、一昨年来、軍の一部を使ったクーデターを幾度も仕掛けてきた。だが、昨年1月の大統領選でマドゥロ大統領が再選されたため、国会で多数を占める野党が「野党の有力者が不当に排除された」「正統性がない」として再選挙を要求。親米路線への回帰を主張するグアイド国会議長が「暫定大統領」に名乗りを上げると、すぐさま米国政府は承認したうえ追加制裁を発動し、マドゥロ政府の退陣を要求した。

 

このグアイド国会議長と米国との背後関係が暴露されている。グアイドは、ベネズエラのベロ・カトリック大学で機械工学を専攻した後、ワシントンにあるジョージ・ワシントン大学で政治学を専攻し、2005年から翌年にかけてセルビアに本部がある「非暴力行動応用戦略センター(CANVAS)」でトレーニングを受けた経歴を持つ。

CANVASは、旧ユーゴのミロシェビッチ体制を倒すために1998年に作られた運動体「オトポール(抵抗)!」から派生した組織で、アメリカ開発援助庁(USAID)や共和党国際研究所(IRI)、投資家ジョージ・ソロスが設立にかかわる政府系NGOの全米民主主義基金(NED)などからの資金援助を受けている。民主化要求運動の活動家を養成することを目的としているが、米国務省CIAの指令を受けて世界各地で活動し、中央アジアでの「カラー革命」や中東の「アラブの春」などで米国政府の意図に従って反米的な政府の転覆に関与してきたことが広く知られている。

 

米国やEUのうち17カ国がグアイドを大統領として承認しているものの、現状ではグアイド自身が国内で承認されたという実体はなにもなく、グアイドが主張する「大統領不在時は国会議長が職務を代行する」という憲法の規定もでっち上げであることが明らかになっている。

 

グアイドは「私が大統領になれば欧米からの支援物資が得られる」と国民に支持を呼びかけているが、制裁によって経済的困難に追い込み、その苦しみを利用して政治的主導権を奪うという手法は、イラクをはじめ世界各地で米国が使ってきた常套手段である。

 

米国自身も直接関与を隠そうとしない。ボルトン大統領補佐官(安全保障担当相)は、「ベネズエラの広大な未開発の石油埋蔵量のため、ワシントンはカラカス(首都)での政治的成果(クーデター)に大きな投資をしている」「アメリカの石油会社にベネズエラへの投資と石油生産を可能にすることができれば、それは経済的にアメリカにとって大きな利益をもたらす」と放言し、これに対してベネズエラのアレアサ外相は「もはやワシントンはクーデターの黒幕というよりも、攻撃の前線に立ち、暴力を煽って従順なベネズエラ野党に命令を出している。証拠はあからさま過ぎて米国内ですら疑う人はない」と反論している。

 

この露骨な内政干渉に対して、ロシア、中国、イラン、シリア、トルコ、ニカラグア、キューバ、ボリビアなどは、「ベネズエラの権力簒奪(さんだつ)を正当化している」と批判を強め、メキシコ、ウルグアイ、ローマ法王庁、国連事務総長、EUは、米国協調とは距離を置いて対話を呼びかけているが、米国政府は「対話の時は終わった」と拒否し、ベネズエラの隣国コロンビアにある7つの軍事共用基地への兵力派遣も示唆している。兵糧攻めにするだけでなく、軍事介入の可能性までちらつかせて恐怖心を与え、ベネズエラ国軍と政権の分裂を促そうと躍起になっているものの、それは米国がベネズエラ国内で民主的な政権転覆ができるほどの影響力を持たず、依拠する基盤が極めて脆弱であることを物語っている。

 

米国の常軌を逸したベネズエラ介入は、世界最大の埋蔵量を誇るベネズエラの石油資源への利権回復とともに、金、ボーキサイト、天然ガス、淡水などの豊富な資源を略奪すること、さらに中南米・カリブ地域を自国の「裏庭」としてきた「モンロー宣言」(米大陸を米国の単独覇権とする)を復権させ、社会主義キューバへの包囲を強化して反米勢力を抑えつけること、自国の覇権を脅かす中国・ロシア・イラン・トルコなどの関係を断ち切る意図を背景にしたものにほかならない。

 

ベネズエラ国内の深刻な困窮を作り出したのは、自国への服従を目的にした米国による制裁であり、「人道」や「民主主義」を主張するのなら制裁を解除し、主権を踏みにじる内政干渉をやめることが筋といえる。軍事的、経済的な圧力を行使して主権を奪いとる凶暴さは、世界中で覇権が縮小しつつある米国の焦りの裏返しでもある。力ずくの略奪は植民地支配とたたかってきたベネズエラを含む中南米の反発を強め、国際的にも米国の孤立を一層深めることは疑いない。

 

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