世界を不幸にしたグローバリズムの正体

世界を不幸にしたグローバリズムの正体

ノーベル経済学賞受賞者スティグリッツの2010年のインタヴュー。 このヴィデオを見て興味を抱いた方は、邦訳のある『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』

スティグリッツ博士と言えば、クルーグマン教授と並んで、市場原理主義者たちの最強の敵として知られる。その言うところは論旨明快で、しかも経済の現実を良く説明しえているというので、市場原理主義の破綻が明らかになった今日、経済理論として主流の場に躍り出てもおかしくない。ところが、現実にはなかなかそうはならないで、相変わらず新古典派経済学の考え方が大手を振ってまかり通っている。その主流派の経済学の実験場になっているのが、IMF、世界銀行、WTOといった国際経済機関であり、かれらはグローバリズムを推進すると称して、相変わらず世界中の人々を不幸に陥れている、とスティグリッツ博士は言う

 

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レーガンとサッチャー時代に起こったと博士は言う。この時代に新古典派経済理論が復活を遂げ、そのもとで市場原理主義と新たなグローバリズムが始まったというのである。

こうした路線を総称してワシントン・コンセンサスという。それは一言で言えば、金融資本の利益がすべてに優先するという考え方、というよりイデオロギーだ。IMFはいまや、先進国の金融資本の利益を代弁する者に変質した、それ故、融資先の国の経済的な発展とか政治的な安定よりも、IMFの融資した金が確実に返済されること、また民間の投資資金が確実に返済されることを最優先にしている。そのためには、融資先の国民がどんなに苦悩にあえごうと、融資した金が価値を失わないように、相手国に過酷な引き締め策を強要することともなる。

ところが、IMFが表向きに言う言葉は、あくまでも途上国の経済の安定と発展という言葉なのである。それは、さすがのIMF官僚でも、自分たちに課せられていた初心を無碍にするわけにはいかない博士は、グローバリゼーション自体を否定しているわけではない。グローバリゼーション自体は、世界中の国々を豊かにすることができる。実際、東アジアの国々が短期間で豊かになったのは、グローバリゼーションの効果だ。うまくやればプラスに働くのがグローバリゼーションだが、やり方を間違えると、巻き込まれた国に大災害をもたらす。

グローバリゼーションが大災害につながるのは、殆どの場合、政府による必要な統制がないままに、急速な市場化にさらされる場合だ。とりわけ、資本市場が急速に自由化されることによって、その国が投機家たちの格好の餌食になる。1990年代に相次いでおきた中南米と東アジアの金融危機は、その典型的なケースだと博士は断罪する。IMFは発展途上国の犠牲のもとに、国際金融資本の利益を図る結果になっただけというわけだ。IMFはまた、世界の民主主義にとって脅威になりつつあるとも博士はいう。IMFが融資と引き換えに押し付ける条件は、受入国にとっては、有無をいわさぬものだ。それはその国の政治的な状況を超越して貫徹される。そのことについて、国民が議論する余地はないのだ。

IMFの非民主的な体質も問題だと博士は言う。IMFは誰からも監視されていない。それをいいことに秘密主義が横行している。その結果、受入国の声が反映したならば、もっと受け入れ可能で、健全な政策を採用できたかもしれない可能性が排除される。抗議運動があれほど根強いのは、この秘密主義のせいなのである。IMFはもっと開かれていなければならない。

IMF内の不透明な議論の中で、最優先されるのは金融資本の利益、それもアメリカの金融資本の利益だと博士は断罪する。ということは、IMFはアメリカの世界経済支配のための隠れ蓑として使われているということだ。実際IMFは、アメリカ財務省の意見に反することは決してしない。また、アメリカ財務省だけが事実上、IMFの決定に対する拒否権を持っているわけなのだ。

こうしてみれば、IMFは世界の経済秩序の安定を目的として始まったものの、今日では、アメリカを中心とした先進国の金融資本の利害を代表する者になってしまったわけだ。

筆者は、今日IMFが世界経済に果している役割を、EU内の国際経済機関がそっくりそのまま(規模は小さいが)真似している事態に思いあたった。EUの実質的指導者たちも、各国の成長よりも、その国の信用に、もっぱら気を使っている。信用とは、国際的な金融ブローカーたちに借金の返済をちゃんとしますよ、というシグナルの事に過ぎない。借金の返済はすべてに優先するというわけなのだ。

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ブレトン・ウッズ体制下でIMFが期待されたのは、不況に陥りかけている国に流動性を供給し、その国の総需要を回復させることだった。世界的な規模でこうした総需要管理策が功を奏すれば、世界経済は自づから安定する。これがIMFの目的であり、初心だったはずだ。

ところがいつの間にか、IMFはすっかり変わってしまった。「市場はしばしば有効に機能しないとする信念のもとに設立されたIMFが、今では市場至上主義者になって、熱烈にそのイデオロギーを信奉している。設立当初は、各国にもっと拡大経済政策~経済を刺激するための支出の増大、減税、金利の引き下げなど~を取らせるために国際協調が必要だと考えていたIMFが、いまでは赤字の削減、増税、金利の引き上げなど、経済の縮小につながる政策をとっている国にしか融資しない場合がほとんどである」

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国際経済機関の中でもっとも罪が深いのはIMFだと博士は言う。世界銀行もIMFほどではないが、やはり罪がないとはいえない。しかし、スティグリッツ博士が幹部として世界銀行にかかわったおかげで、IMFよりははるかにましな活動をするようになった、と胸を張る。WTOに至っては、むちゃくちゃなグローバリゼーションを進めるだけで、世界経済の安定と発展に殆ど寄与していないばかりか、発展途上国の貧困を助長し、地球環境を破壊するばかりだ、それ故、環境団体から強烈な抗議行動を受けるのも無理はない、こんな調子でするどい批判を展開している。

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「世界を不幸にしたグローバリズムの正体」(鈴木主税訳、徳間書店)という本は、そうしたグローバリズムの推進力となってきた国際経済機関、とりわけIMFの行動とその背後にある経済思想を徹底的に批判したものだ。三百数十ページもある本の、殆どすべてのページに渡ってIMFへの非難が展開されている。

IMFが羽目をはずすようになった理由は初心を忘れたことだ、と博士は言う。IMFの初心とは何か。それは設立趣旨の中に歌われている。そしてその設立趣旨についてのガイドラインを書いたのはケインズだ。ケインズは、1930年代の世界恐慌が第二次世界大戦の原因となったという理解の上に立って、戦後の世界を安定したものとするには、世界経済を不況から救うための枠組みが必要だと主張した。その枠組みとは、ケインズの指導に基づいて一国内部で行われた総需要管理政策を、国際的な規模で実施するというものだった。すなわち、各国は自国の経済について総需要を維持する責任をもつ一方、それに必要な資金を調達できない場合には、IMFや世界銀行が補填するというものだった。すなわちブレトン・ウッズ体制と呼ばれるものである。

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