グローバリスト対談竹中平蔵×ムーギー・キム

竹中平蔵×ムーギー・キム 財務省は、なぜ大臣をからめとるのが上手いのか?首相を引きずりおろすのは野党ではなく与党!

竹中平蔵(東洋大学教授)、ムーギー・キム(投資家)

「官僚の中の官僚」「最強の省庁」と言われる財務省。
そんな財務官僚のトップである福田淳一事務次官が『週刊新潮』によるセクハラ報道の疑惑により、辞職することが発表された。
一部新聞では、安倍首相や菅官房長官サイドでは早期辞任を望んでいたが、麻生太郎財務大臣がそれを飲まなかった、とも報じられている。
なぜ事態がこれほど「炎上」するまで官邸サイドは決定的な手を打てなかったのか?
その本質的な理由について、竹中平蔵×ムーギー・キムの新刊『最強の生産性革命 時代遅れのルールに縛られない38の教訓』から、抜粋する。

(冒頭 ムーギー・キム)

さて、最近は安倍首相の3選が危ういだの、どこどこの派閥の領袖(りょうしゅう)が次の首相を決めただの、解散選挙に打って出るだの(何回選挙するのほんとに!)、首相交代論が急速に盛り上がっている。

少し前に若手官僚に省内の雰囲気を聴いたら、佐川氏が証人喚問であそこまで“しらばっくれた”ので、なんだかんだいって山は越えた、安倍首相の3選が既定路線だ、とものの1週間前くらいに聴いたのだが、ここ数日の事態の急展開ぶりには、目を見張るものがある。

中でも財務次官の“しらばっくれぶり”と、“逆に提訴も辞さず”の姿勢は失笑ものであり、“今の政府は信用できない”という世論に火を注いだ気がするが、この「世論とメディアの反応」を読み違えたのは、ここ数年メディア戦略が格段に上達した自民党としては、珍しい大失点であった。

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それはさておき、いまさらながら、「首相はだれが、どんなメカニズムで交代させるのか」「財務相はなぜ、政治とズブズブなのか」というメカニズムについて、ここだけのハナシ、よくわかっていない人は多いのではないか。

今回は新刊『最強の生産性革命 時代遅れのルールに縛られない38の教訓』から、政界の内部を知り尽くした竹中平蔵氏にその実態を語っていただこう。

竹中 まず日本では、総理というのは国民に直接選ばれたわけではないんです。国民に選ばれた国会議員が、国民の代表として総理を選ぶ。

では、与党の国会議員はどういう基準で総理を選んでいるかというと、「この人を看板として次の選挙で自分が勝てるかどうか」ということなんです。

キム その人にリーダーシップがあるかどうか、賢いかどうか、といった基準ではないわけですね。

 

竹中 言い換えるなら、総理を引きずりおろすのは野党ではなく、与党なんです。選挙で勝てないと思ったら、代わりに勝てる人を立てるわけです。

そうすると、総理は引きずりおろされないように、いろいろバランスを考えなきゃいけない。仲間内に足を引っ張られないように。

しかし一方、そもそもリーダーとは何かといえば、組織に新しい変化を持ち込める人のことです。それには当然、リスクがつきまとう。だから総理には、常にリスク管理が求められます。

例えば民間企業でも、社長は副社長や専務にポストを狙われているかもしれません。それに備えたリスク管理が必要でしょ。

そういう観点から見ると、日本の組織はリスク管理にものすごく大きな労力を割かなければいけない。しかし、そこを重視するほど、得てして大きな変革はできなくなるわけです。

政治家もメディアも官僚に抱き込まれ、革新をはばむ

竹中 それから官僚がやりたい政策がある場合は、自分たちで動くと角が立つから、誰か国会議員を担ぐんです。「事務的なことは全部うちがやりますから、先生の名前で法案を出してください」と。こういうのも結構ありますね。

キム つまり、この議員が言えば周囲も怖がって文句を言わないだろう、という人に目をつけるわけですか。怖さだけで食っている議員って、けっこういそうですからね。ヤクザの世界みたいに。

竹中 そういうパターンも結構ありますね。そこで何度も言うけれど、役所を敵に回す政策こそ、本当はメディアに応援してもらいたいんですよ。ところが、逆にメディアはそれを叩いてくるわけ。だから大変なんです。

キム すごいですね。要するに政治家にしろメディアにしろ、主要ステークホルダーの多くが何もわかっていないまま大騒ぎを起こしていると

竹中 そういうことですよ。だから大臣が妙にがんばると、たいへんなリスクを負うんです。一方、がんばらない大臣はリスクを負わないかわりに名前も知られない。

だから、一回国民に聞いてみたいですよね。「あなたは今の18人の閣僚のうち、何人の名前を言えますか?」と。

キム いや、これは皆ほとんど答えられないでしょう。つまり、大臣が何もやってないことの現れですね。

ところで今、大臣の話が出ましたが、そもそも大臣ってどんな基準で選ばれているんでしょうか。どう考えても専門から一番遠そうな人が選ばれたりしていますよね。いかにも役に立たなそうなおじさん、おばさんがいっぱいいるわけですが。これも多くの国民が抱いている巨大な疑問だと思います。

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一般的には、何期目の議員だとか、派閥の顔を立てるといった内輪の論理で選ばれているイメージなんですが、実際はどうなんですか?

竹中 まぁ、それがベースですね。もちろん政治的な判断で選ばれているわけですが、それは基本的にその人が専門家かどうかではありません。

前の選挙で支えてくれたとか、そういう政治判断ですね。そういう意味で、選ばれるべき人が選ばれないと、党内がざわついたりするんです。

政策通」大臣の悲しき実態――官僚は政治家に「貸し」を作り、味方に引き入れる

竹中 もっとも、日本の政治家に政策能力が足りないことは事実ですね。何かあったら官僚に教えてもらうしかない。そこに官僚の生きる道があるわけです。官僚の最大の力は、政治家に貸しを作ることです。それによって政治支配から逃れることができる。

とりわけそういう訓練を徹底的に受けているのが、財務省です。財務官僚はすごい。ほぼ全員が手帳を持ち、何でも片っ端からメモしている。で、こちらでいろいろ話したら、3日後くらいに電話がかかってきて、「大臣、先日お話しされたことについて調べましたので、ご説明に伺ってもよろしいでしょうか」と来るんです。

たしかに使える情報をすべて調べて教えてくれる。これはすまんなということで、政治家は彼らに借りを作ってしまうわけです。

しかも、相手は政治家だけではない。私が大臣を辞めた後でも、局長や次官が挨拶に来て、近々に発表する重要案件などについて説明してくれたりするんです。

それが、今でも来るんですよ。この人には誰々と、それぞれマンツーマンで担当者を決めているらしい。

キム いろいろ親切に教えてもらえると、心情的に絡め取られますよね。

竹中 そう。よほど強い信念を持つ政治家ならともかく、連日のように面倒を見てもらっていたら、言うことを聞いてしまいますよね。

しかも、官僚の言うことを聞く政治家には、もう一つ「特典」があるんです。官僚が新聞記者に対して「あの人は政策通だ」と吹聴してくれる。

見方を変えれば、メディアでよく言われる「政策通」とは、役人の言うことを聞いてくれる、官僚にとって都合のいい政治家という意味です。

「役人の言うことを理解できないアホではない」ということなんですよ。

キム たしかに麻生太郎さんとか、よく「政策通」と呼ばれます。財務官僚の言うことをよく聞いてくれるということなんですね。

そういえば先生も「政策通」とは呼ばれませんよね。呼ばれるとすれば「ユダヤの手先」とか「新自由主義者」とか「貧富の格差を広げた張本人」とか「脱税王」とか。先生、ひどいことやってますね(笑)。

竹中 全部言ったな(笑)。

キム つまり、メディアや官僚に応援される政治家というのは、往々にして既得権益にがんじがらめになって、結局何もやっていないということなんですね。さんざん悪評を立てられている人のほうが、むしろ既得権益に切り込んで国民のために戦っている。

そこに気づかず、メディアと一緒になって批判するのは虚しくないですか、ということですよね。

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