TAGって何やねん

TAGって何やねん

日米物品貿易協定など信じるな!

TAGはゴマカシ

 

キャスター:佐藤健志・佐波優子

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■ TAG(日米物品貿易協定)など信じるな!

■ 世論調査に見る日中の感覚の違い

戦後のわが国は、対米協調路線を基本方針としてきました。「協調」と言えば聞こえがいいものの、この方針は「アメリカの子分となるかわりに、国際社会における立場を後押ししてもらう」という従属の性格を強く持っています。

ただし、いちがいに批判はできません。1950年代、敗戦の痛手から立ち直りはじめたばかりのわが国にとって、対米協調、ないし従属路線は、安全保障(つまり国防)の負担を最小限に押さえ、経済発展に全力を注ぐための手段でした。そして日本は高度成長をなしとげ、いったんは世界有数の経済大国となったのです。

けれども平成に入ったころから、対米協調路線は裏目に出ます。アメリカが自国の都合に合わせて、さまざまな改革を要求するようになったためです。 「アメリカとの関係をとにかく良好に保つことこそ、発展と繁栄の道だ」という発想に慣れてしまった日本政府は、要求をズルズルと受け入れてきました。が、アメリカの都合に合わせたものである以上、これらの改革はわが国にとり、むしろマイナスに作用します。

平成が「平貧の時代」となったのも、無理からぬことと評さねばなりません。問題は日本政府が、現実を直視して方針転換を図るどころか、「そんなことはない! 改革を受け入れることは、わが国にとってもプラスなんだ!」という旨を強弁しがちなこと。

つまりは自国民を(実質的に)だましてでも、アメリカへの従属、もとへ協調を貫こうとするようになったのです!

日米共同声明は何を合意したのか

9月26日、安倍総理とトランプ大統領の首脳会談において合意された、日米貿易協定をめぐる交渉の開始は、その端的な例でしょう。

これは普通、「物品貿易協定(Trade Agreement on goods, 略称TAG)」の交渉開始と受け取られています。TAGは物品の輸出入をめぐる関税の削減や撤廃のみをめざすので、サービス分野や投資などに関しても取り決めを交わす「自由貿易協定(Free Trade Agreement, 略称FTA)とは別物というのが政府見解。安倍総理も、「FTAとは全く異なる」と説明したと報じられています(ニューズウィーク日本版、2018年9月27日配信記事)。

なるほど、TAGとFTAが同じはずはありません。そのかぎりにおいて、総理の説明は正しい。

アメリカは以前より、わが国にたいして、二国間のFTAを要求してきました。にもかかわらず、TAGで合意したというのですから、これだけを取れば、日本が向こうの要求を退けたようにも見える。

ところが、お立ち会い。正しい説明をしているにもかかわらず、総理の言葉は日米間の貿易交渉について、間違った印象を与えるものなのです!

なぜか。

「日米両国がTAGをめぐる交渉開始を合意した」ということは、「日米両国が交渉開始に合意したのはTAGのみである」ことを意味しないのです。

え? と思った方のために、合意を表明した日米共同声明を振り返ってみましょう。協定の交渉開始を記した第三項は、外務省のサイトに掲載された日本語訳ではこうなっています。

TAGはゴマカシの道具にすぎない

日米両国はまた、上記の協定の議論の完了の後に、他の貿易・投資の事項についても交渉を行うこととする。

もう、お分かりですね。

TAG自体は、物品の輸出入のみをめぐる協定かも知れません。しかるにそれと並行して、サービスを含む他の分野についても、貿易協定の交渉を始めると明記されているのです。おまけにその後には、「他の貿易・投資の事項」についてまで、交渉を行うことになっている。

では、クイズです。物品、サービス、投資のすべてについて、関税をはじめとする障壁の削減や撤廃をめざす協定を、何と言ったでしょう?

ピンポーン! FTAです。

TAGはFTAとは異なるという安倍総理の説明は、そのかぎりでは間違っていません。だとしても、アメリカが要求していた二国間FTAの交渉を、日本が退けたことにはならない。

ハッキリ言ってしまえば、共同声明はFTAを、以下の三つに分解したにすぎないのです。
(1)TAG
(2)サービスを含む他の重要分野についての協定
(3)投資を含む他の貿易の事項についての協定

こうしておけば、「FTAを受け入れたわけではない」と強弁しつつ、FTAをめぐる要求を受け入れることができる次第。現にトランプは、共同声明の発表にあたり、「我々は今日、FTA交渉開始で合意した」と胸を張っています。

だから日本政府は、自国民を(実質的に)だましてでも、アメリカへの従属、もとへ協調を貫こうとするようになったと言うのですよ!

し・か・も。

TAGについては、さらにとんでもない真実がひそんでいます。

驚くなかれ、TAGの概念そのものが、日本側が勝手に主張しているだけの代物である恐れが強いのです!

これについては、後編でお話しすることにしましょう。

ではでは♪

佐藤 健志

  1966年東京都生まれ。評論家・作家。東京大学教養学部卒。1989年、戯曲「ブロークン・ジャパニーズ」で文化庁舞台芸術創作奨励特別賞受賞。

主著に『右の売国、左の亡国』『戦後脱却で、日本は「右傾化」して属国化する』『僕たちは戦後史を知らない』『夢見られた近代』『バラバラ殺人の文明論』『震災ゴジラ! 』『本格保守宣言』『チングー・韓国の友人』など。
共著に『国家のツジツマ』『対論「炎上」日本のメカニズム』、訳書に『〈新訳〉フランス革命の省察』、『コモン・センス完全版』がある。
ラジオのコメンテーターはじめ、各種メディアでも活躍。2009年〜2011年の「Soundtrax INTERZONE」(インターFM)では、構成・選曲・DJの三役を務めた。

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