日本経済、滅びの道

日本経済、滅びの道

【経済討論】日本経済、滅びの道をひた走り?![桜H31/4/6]

 

 

パネリスト:
安藤裕(内閣府大臣政務官兼復興大臣政務官・衆議院議員)
石井孝明(ジャーナリスト)
高橋洋一(嘉悦大学教授・「政策工房」会長)
田村秀男(産経新聞特別記者・編集委員兼論説委員)
藤井聡(京都大学大学院教授)
松田学(松田政策研究所代表・元衆議院議員)
三橋貴明(経世論研究所所長)
渡邉哲也(経済評論家)
司会:水島総

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10%消費税でデフレの“泥沼”抜けられず…際限ない消費低迷へ

 

拙論が24日付の産経新聞朝刊「日曜経済講座」で、10月に実施が予定されている消費税率の10%への引き上げの凍結を求めたところ、読者からさまざまな反響があった。多くは増税時の混乱についてだ。

例えば、政府が増税の衝撃緩和策としている中小業者店舗でのキャッシュレス決済に対するポイント還元については、中小業者の受け入れがばらついており、10月までに態勢が整いそうにないという実情。食料品も品目によっては軽減税率の対象になるかどうかの線引きが微妙だ。そんなありさまで、小売りの現場は頭が痛いだろう。

 

景気対策としては、防災を名目にした公共投資が地方の特定地域に今回だけ集中するが、人手不足で消化難、しかも翌年は発注が激減する。何という稚拙で計画性のなさか。政府の知性を疑う。

折しも、世界景気の先行き懸念により株価不安が高まっている。度重なる消費税増税による経済への災厄に目を背け、10%への引き上げをもくろむ財務省を後押ししてきた日本経済新聞などメディアの多数派の論調は相変わらずだが、一部はビビり始めた。

 

24日付日経朝刊はポイント制解説記事の末尾で、「足元では海外経済の減速を受け、景気の先行きが不透明になっている。3月の春季労使交渉では、大企業でも賃上げ率が18年を下回る例が目立った。増税が消費者心理に与える影響は大きく、消費を支えきれるかどうかはまだ見通せない」と付け足している。

 

安倍晋三政権は結局のところ、新年度予算成立後、4月初めから5月下旬にかけて、消費税増税の先送りに踏み切るとの観測が市場に出るのも無理はない。

 

拙論はそんな浮ついた景気観に同調するつもりはない。海外経済不安は昨年から始まっている。デフレ圧力が続く間は消費税増税すべきではないと、いたってシンプルに繰り返してきた通りだ。

1997年度の増税以来、日本経済は慢性デフレに陥り、20年以上たっても脱デフレ成らず自滅、という惨状を憂慮するのだ。デフレ病はアベノミクスが2012年12月に始まったあと、症状はかなり緩和したが、14年度の増税でぶり返したままだ。

1997年度増税前からと2014年度増税前からの各5年間の実質正味家計消費の推移を追っている。「正味」とは、国民経済計算では最終家計消費に加算されている持ち家のみなし家賃を除外した分である。

一目瞭然、97年度増税後よりも、14年度増税後のほうがはるかにショックは大きく、しかも元の水準に回復しないまま、家計消費が低迷を続けていることがわかる。97年度、14年度とも駆け込み消費と増税後の落ち込みが激しかったのだが、税率5%よりも8%のほうがはるかに大きな重圧となって、家計を苦しめている。

政府は今秋の増税ではポイント還元などで駆け込み消費を和らげるので、反動減、消費不況を避けられるというが、浸透が疑わしい期間限定の一時的措置だ。税率10%という重税で消費は際限なく低迷が続くだろう。

(産経新聞特別記者・田村秀男)

 

日本人大半の暮らし向きは、一貫して悪くなり続けている

 

ほとんどの政治家は「今、消費増税を実施するのは良くない」ということは理解できていると認識しています。しかし、実際の政治は「政策」だけで動くものではなく、そこに「力学」が働きます。今後政治の力学をどのように駆動させて、「増税凍結」の方向にもち込むことができるのかを私たちは問われています。このまま行くと、2019年の日本経済は、「働き方改革による残業代の縮減」「オリンピック投資の終焉」「消費増税」というトリプルパンチで激しく縮小します。

アベノミクスは論理的には正しい政策で、財政と金融でしっかり需要を創出し、高圧経済(需要が供給を上回り、それがまた投資を誘発してさらに需要圧力を高める傾向にある経済)状況をつくり、その後、より効率的に成長を促すために、構造政策(より容易に成長していくことが可能な仕組みをつくる対策)を計っていくというのが建前上の論理になっています。しかし、私はアベノミクスの成果はまだ十分に出ていないと認識しています。なぜならば、6年間やってもデフレ状況から脱却できていないという現実があるからです。それはひとえに、財政出動が不足しているからと認識しています。

「大胆な異次元の金融政策」や「機動的な財政政策」とブレーキ(「消費増税」)を一緒に踏んでしまいました。もし、ブレーキがなく、アクセルをもっと踏み込んで入れば、デフレを脱却、今頃は空前の好景気を迎えている。

中小企業DI(中小企業の「景況感」を意味しているもので、「景気が良い」と判断している企業の割合から、「悪い」と判断している企業の割合を差し引いた尺度)にはっきり出ています。この10年間、中小企業DIは一貫してずっと「マイナス」です。それは、2008年のリーマン・ショック以来、中小企業の景気は10年間悪化し続けている、すなわち、日本人大半の暮らし向きが一貫して悪くなり続けていることを意味しています。

そもそも、政府が公表している「景気判断」は、多分に輸出企業や株式上場の「大企業」の経営状態を色濃く反映しています。しかし、大企業に勤めている国民はごく一部に限られています。国内企業の99%を占める「中小企業」の景況は政府が公表する日本全体のマクロな景気判断の際には大して考慮されていません。

さらにいえば、「悪化の速度」それ自身は、リーマン・ショック時が「どん底」の状況で、その後一貫して“マシ”になり続けていました。しかし、2014年4月の「消費増税」(5%➡8%)でその改善の歩みが“ピタリ”と止まり、それから現在まで4年間、中小企業の景況感は一切改善されていません。

藤井聡

 

 

 

 

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財政再建は、実は完了している?

 

借金1000兆円、国民一人当たりに直すと800万円になる。みなさん、こんな借金を自分の子や孫に背負わせていいのか。借金を返すためには増税が必要だ。……こんなセリフは誰でも聞いたことがあるだろう。財務省が1980年代の頃から、繰り返してきたものだ。

テレビ番組は時間も少ないので、簡単に話した。「借金1000兆円というが、政府内にある資産を考慮すれば500兆円。政府の関係会社も考慮して連結してみると200兆円になる。これは先進国と比較してもたいした数字ではない」

これに対して、番組内で、ゲストの鳥越俊太郎さんから、「資産といっても処分できないものばかりでしょう」と反論があった。それに対して、多くの資産は金融資産なので換金できる、といった。

筆者がこう言うのを財務省も知っているので、財務省は多くのテレビ関係者に対して、「資産は売れないものばかり」というレクをしている。鳥越さんも直接レクされたかがどうかは定かでないが、財務省の反論を言ってきたのには笑ってしまった。

番組が昼にかかり15分くらいの休憩があった。そのとき、鳥越さんから、「金融資産とは何ですか」と筆者に聞いてきた。「政策投資銀行(旧日本開発銀行)やUR都市機構(旧住都公団)などの特殊法人、独立行政法人に対する貸付金、出資金です」と答えた。それに対して「それらを回収したらどうなるの」とさらに聞かれたので、「民営化か廃止すれば回収ということになるが、それらへの天下りができなくなる」と答えた。

このやりとりを聞いていた他の出演者は、CM中のほうがためになる話が多いといっていた。実際に、番組中で言うつもりだったが、時間の都合でカットせざるを得なくなった部分だ。

借金1000兆円。これは二つの観点から間違っている。

 

第一に、バランスシートの右側の負債しか言っていない。今から20年近く前に、財政投融資のALM(資産負債管理)を行うために、国のバランスシートを作る必要があった。当時、主計局から余計なことをするなと言われながらも、私は財政投融資が抱えていた巨額の金利リスクを解消するために、国のバランスシートを初めて作った。

財政が危ういという、当時の大蔵省の主張はウソだったことはすぐにわかった。ただし、現役の大蔵官僚であったので、対外的に言うことはなかった。

筆者の作った国のバランスシートは、大蔵省だからか「お蔵入り」になったが、世界の趨勢から、その5年くらい後から試案として、10年くらい後から正式版として、財務省も公表せざるを得なくなった。今年3月に、2013年度版国の財務書類が公表されている(http://www.mof.go.jp/budget/report/public_finance_fact_sheet/fy2013/national/hy2013_gassan.pdf)。

その2013年度末の国のバランスシートを見ると、資産は総計653兆円。そのうち、現預金19兆円、有価証券129兆円、貸付金138兆円、出資66兆円、計352兆円が比較的換金可能な金融資産である。そのほかに、有形固定資産178兆円、運用寄託金105兆円、その他18兆円。

負債は1143兆円。その内訳は、公債856兆円、政府短期証券102兆円、借入金28兆円、これらがいわゆる国の借金で計976兆円。運用寄託金の見合い負債である公的年金預り金112兆円、その他45兆円。ネット国債(負債の総額から資産を引いた額。つまり、1143兆円-653兆円)は490兆円を占める。

先進国と比較して、日本政府のバランスシートの特徴を言えば、政府資産が巨額なことだ。政府資産額としては世界一である。政府資産の中身についても、比較的換金可能な金融資産の割合がきわめて大きいのが特徴的だ。

なお、貸付金や出資金の明細は、国の財務書類に詳しく記されているが、そこが各省の天下り先になっている。実は、財務省所管の貸付先は他省庁に比べて突出して多い。このため、財務省は各省庁の所管法人にも天下れるので、天下りの範囲は他省庁より広い。要するに、「カネを付けるから天下りもよろしく」ということだ。

 

第二の問題点は、政府内の子会社を連結していないことだ。筆者がバランスシートを作成した当時から、単体ベースと連結ベースのものを作っていた。現在も、2013年度版連結財務書類として公表されている(http://www.mof.go.jp/budget/report/public_finance_fact_sheet/fy2013/national/hy2013_renketsu.pdf)。

それを見ると、ネット国債は451兆円となっている。単体ベースの490兆円よりは少なくなっている。

ただし、この連結ベースには大きな欠陥がある。日銀が含まれていないのだ。日銀への出資比率は5割を超え、様々な監督権限もあるので、まぎれもなく、日銀は政府の子会社である。

経済学でも、日銀と政府は「広い意味の政府」とまとめて一体のものとして分析している。これを統合政府というが、会計的な観点から言えば、日銀を連結対象としない理由はない。筆者は、日銀を連結対象から除いた理由は知らないが、連結対象として含めた場合のバランスシート作ることはできる。

2013年度末の日銀のバランスシートを見ると、資産は総計241兆円、そのうち国債が198兆円である。負債も241兆円で、そのうち発行銀行券87兆円、当座預金129兆円である。

そこで、日銀も含めた連結ベースでは、ネット国債は253兆円である(2014.3.31末)。

直近ではどうなるだろうか。直近の日銀の営業毎旬報告(https://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2015/ac151220.htm/)を見ると、資産として国債328兆円、負債として日銀券96兆円、当座預金248兆円となっている。

直近の政府のバランスシートがわからないので、正確にはいえないが、あえて概数でいえば、日銀も含めた連結ベースのネット国債は150~200兆円程度であろう。そのまま行くと、近い将来には、ネット国債はゼロに近くなるだろう。それに加えて、市中の国債は少なく、資産の裏付けのあるものばかりになるので、ある意味で財政再建が完了したともいえるのだ。

ここで、「日銀券や当座預金も債務だ」という反論が出てくる。これはもちろん債務であるが、国債と比べてほぼ無利子である。しかも償還期限もない。この点は国債と違って、広い意味の政府の負担を考える際に重要である。

このようにバランスシートで見ると、日銀の量的緩和の意味がはっきりする。

政府と日銀の連結バランスシートを見ると、資産側は変化なし、負債側は国債減、日銀券(当座預金を含む)増となる。つまり、量的緩和は、政府と日銀を統合政府で見たとき、負債構成の変化であり、有利子の国債から無利子の日銀券への転換ということだ。

このため、毎年転換分の利子相当の差益が発生する(これをシニョレッジ〔通貨発行益〕という。毎年の差益を現在価値で合算すると量的緩和額になる)。

また、政府からの日銀への利払いはただちに納付金となるので、政府にとって日銀保有分の国債は債務でないのも同然になる。これで、連結ベースの国債額は減少するわけだ。

量的緩和が、政府と日銀の連結バランスシートにおける負債構成の変化で、シニョレッジを稼げるメリットがある。と同時にデメリットもある。それはシニョレッジを大きくすればするほど、インフレになるということだ。だから、デフレの時にはシニョレッジを増やせるが、インフレの時には限界がある。

その限界を決めるのがインフレ目標である。インフレ目標の範囲内であればデメリットはないが、超えるとデメリットになる。

幸いなことに、今のところ、デメリットはなく、実質的な国債が減少している状態だ。

こう考えてみると、財務省が借金1000兆円と言い、「だから消費増税が必要」と国民に迫るのは、前提が間違っているので暴力的な脅しでしかない。実質的に借金は150~200兆円程度、GDP比で30~40%程度だろう。

ちなみに、アメリカ、イギリスで、中央銀行と連結したネット国債をGDP比でみよう。アメリカで80%、65%、イギリスは80%、60%程度である。これを見ると、日本の財政問題が大変ですぐにでも破綻するという意見の滑稽さがわかるだろう。

以上は、バランスシートというストックから見た財政状況であるが、フローから見ても、日本の財政状況はそれほど心配することはないというデータもある。

本コラムの読者であれば、筆者が名目経済成長でプライマリー収支を改善でき、名目経済成長を高めるのはそれほど難しくない、財政再建には増税ではなく経済成長が必要と書いてきたことを覚えているだろう。

その実践として、小泉・第一安倍政権で、増税はしなかったが、プライマリー収支がほぼゼロとなって財政再建できた。これは、増税を主張する財務省にとって触れられたくない事実である。実際、マスコミは財務省の言いなりなので、この事実を指摘する人はまずいない。

さらに、来2016年度の国債発行計画を見ると、新規に市中に出回る国債はほぼなくなることがわかる。これは、財政再建ができた状況とほぼ同じ状況だ。こうした状態で、少しでも国債が市中に出たらどうなるのか。金融機関も一定量の国債投資が必要なので、出回った国債は瞬間蒸発する。つまり、とても国債暴落という状況にならないということだ。

何しろ市中に出回る国債がほとんどないので、「日本の財政が大変なので財政破綻、国債暴落」と言い続けてきた、デタラメな元ディーラー評論家(元というのは使い物にならなかった人たちということ)には厳しい年になるだろう。

2016年度の国債発行計画(http://www.mof.go.jp/jgbs/issuance_plan/fy2016/gaiyou151224.pdf)を見ると、総発行額162.2兆円、その内訳は市中消化分152.2兆円、個人向け販売分2兆円、日銀乗換8兆円である。

余談だが、最後の日銀乗換は、多くの識者が禁じ手としている「日銀引受」である。筆者が役人時代、この国債発行計画を担当していたときにもあったし、今でもある。これは、日銀の保有長期国債の償還分40兆円程度(短国を含めれば80兆円程度)まで引受可能であるが、市中枠が減少するため、民間金融機関が国債を欲しいとして、日銀乗換分を少なめにしているはずだ。

要するに、今の国債市場は、国債の品不足なのだ。カレンダーベース市中発行額は147兆円であるが、短国25兆円を除くと、122兆円しかない。ここで、日銀の買いオペは新規80兆円、償還分40兆円なので、合計で120兆円。となると、市中消化分は、最終的にはほぼ日銀が買い尽くすことになる。

民間金融機関は、国債投資から貸付に向かわざるを得ない。これは日本経済にとっては望ましいことだ。と同時に、市中には実質的に国債が出回らないので、これは財政再建ができたのと同じ効果になる。日銀が国債を保有した場合、その利払いは直ちに政府の納付金となって財政負担なしになる。償還も乗換をすればいいので、償還負担もない。それが、政府と日銀を連結してみれば、国債はないに等しいというわけだ。

こういう状態で国債金利はどうなるだろうか。市中に出回れば瞬間蒸発状態で、国債暴落なんてあり得ない。なにしろ必ず日銀が買うのだから。

こうした見方から見れば、2016年度予算(http://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2016/seifuan28/01.pdf)の国債費23.6兆円の計上には笑えてしまう。23.6兆円は、債務償還費13.7兆円、利払費9.9兆円に分けられる。

諸外国では減債基金は存在しない。借金するのに、その償還のために基金を設けてさらに借金するのは不合理だからだ。なので、先進国では債務償還費は計上しない。この分は、国債発行額を膨らせるだけで無意味となり、償還分は借換債を発行すればいいからだ。

利払費9.9兆円で、その積算金利は1.6%という。市中分がほぼなく国債は品不足なのに、そんなに高い金利になるはずない。実は、この高い積算金利は、予算の空積(架空計上)であり、年度の後半になると、そんなに金利が高くならないので、不用が出る。それを補正予算の財源にするのだ。

マスコミはいつまで財務省のポチでいるのか

このような空積は過去から行われていたが、その分、国債発行額を膨らませるので、財政危機を煽りたい財務省にとって好都合なのだ。債務償還費と利払費の空積で、国債発行額は15兆円程度過大になっている。

こうしたからくりは、予算資料をもらって、それを記事にするので手一杯のマスコミには決してわからないだろうから、今コラムで書いておく。

いずれにしても、政府と日銀を連結したバランスシートというストック面、来年度の国債発行計画から見たフロー面で、ともに日本の財政は、財務省やそのポチになっているマスコミ・学者が言うほどには悪くないことがわかるだろう。

にもかかわらず、日本の財政は大変だ、財政再建が急務、それには増税というワンパターンの報道ばかりである。軽減税率のアメをもらったからといって、財務省のポチになるのはもうやめにしてほしい。

 

髙橋 洋一

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