新型ウイルスパンデミックの可能性は

新型ウイルスパンデミックの可能性は

新型ウイルスと中東問題、パンデミックの可能性は

「中国発コロナウイルスが拡散しています。北朝鮮でさえ中国人の入国を禁止しており、春節期間だけでも一時的に(中国人の)入国禁止を要請します」

1月23日、大統領府の掲示板に掲載されたこの請願には、31日までに60万人を超える韓国国民が賛同した。大統領府側はまだ回答を出していないが、主務省庁である保健福祉部の朴淩厚(パク・ヌンフ)長官は29日、「特定の国家の国籍を基準に(入国を)禁止することは極めて大きな問題を引き起こす恐れがある」「国際法上に難しい」と説明している。

しかし、すでに韓国社会のあちこちで、自発的(?)な「中国人立ち入り禁止」措置が行われだしている。中国人客を拒否するホテルやレストラン、中国人の乗車を拒否するタクシーなどが増えており、中国人密集地域への配達を拒否する配達労組も登場した。

ネット上では昨年大流行した「ノー・ジャパン」ポスターを模した「ノー・チャイナ」ポスターが登場した。

中国の五星紅旗が描かれたNOという文字の下には「ボイコット・チャイナ コロナウイルス」という掛け声とともに、「死にたくありません、受け入れたくありません」と書かれている。ノー・ジャパンのポスターの「行きません、買いません」をパロディーしたものである。

他にもSNSでは「中国人はウイルスそのもの」「コウモリを食べる未開な人種」など、差別的な表現が溢れている。

 

 

経済産業省経済産業研究所 上席研究員 藤和彦氏

 

新型コロナウイルスの被害予測については、遺伝子配列がSARS(重症急性呼吸器症候群、2002年11月から2003年7月にかけて流行)と類似していることから、SARSと比較されることが多い。世界銀行は「SARSの感染拡大により世界経済に330億ドルの損失をもたらした」としており、同時期の原油価格は2割下落した。これを元に試算すれば、1バレル=60ドル前後だった原油価格は50ドル割れする可能性がある。

だが筆者は「新型コロナウイルスの悪影響はSARSをはるかに超える規模になるのではないか」と危惧している。

英国の専門家グループ(理論疫学)は1月23日、「世界の新型コロナウイルスの感染者数は2月4日に武漢市で25万人を突破する」という驚くべき研究報告を発表した(1月25日付ZeroHedge)からである。分析の元になっているのは基本生産数(RO、1人の患者から何人に感染させるかを示す数値)である。ROの数値が大きいほど感染症の蔓延を防ぎにくいことを意味する。世界保健機関(WHO)の推定値は1.4~2.1人だが、専門家グループは3.6~4.0人としている。予測される感染者数(25万人超)はSARSの感染者数(8098人)の30倍以上となっているが、この数字はあくまで2月4日までのものに過ぎない。

武漢市では感染拡大を防止するため、11月23日から飛行機をはじめとする公共交通機関が停止された。だが「封鎖されるまでに500万人もの無症状感染者が武漢市およびその周辺地域を後にした」との指摘がある(1月26日付ZeroHedge)ように、今後、中国の他の都市でも爆発的に感染が広がり、海外への蔓延も加速することは確実視されている。感染のピークは4~5月とされていることから、新型コロナウイルスの感染者数は25万人よりもはるかに大きくなる可能性が高いのである。

事態の急激な悪化を踏まえ、専門家の間では「SARSではなくスペイン風邪の事例を参考にして新型コロナウイルス対策を講ずるべきではないか」との声が出ている。

スペイン風邪とは1918年から1919年にかけて世界的に流行したH1N1型のインフルエンザである。当時の世界人口は約20億人だったが、その大半が感染し、1年半という短期間に5000万人以上が死亡したとされている。

前述の専門家グループによれば、20世紀最大のパンデミック(病気の世界的な流行)を引き起こしたスペイン風邪のROは1.8人と、新型コロナウイルスよりはるかに低い数値だった。

100年前に比べ世界の公衆衛生・感染症対策のレベルは飛躍的に向上しているが、グローバリゼーションの進展で人の移動速度・範囲も格段に上がっており、新型コロナウイルスの被害想定はスペイン風邪のそれとの比較で行うべきだろう。世界銀行は「スペイン風邪で当時の世界のGDPは4.8%低下した」としており、現在の経済規模に換算すれば3兆ドルを超える損失が発生したことになる。

経済損失額がSARSの約100倍になったら、原油価格がどこまで下落するか想像もつかない。

OPEC加盟国とロシアなどの大産油国(OPECプラス)は今年から日量170万バレルの減産を実施しているが、3月の見直し時期を待たずにさらなる減産に追い込まれるのは必至である。仮にさらなる減産を講じたとしても、油価が上がる保証はまったくない。

「中東地域の地政学リスクで原油価格は急騰する」という昨年末以来の筆者の予測は、別の地政学リスク(新型コロナウイルスのパンデミック)で見事に外れてしまった。だが、原油価格の急落が中東産油国の財政を瀕死の状態に追い込むことにより、当該地域の潜在的な地政学リスクはさらに高まり、時期は遅れるかもしれないが、第3次石油危機の現実味が一層増したのではないだろうか。

 

 



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