脳梗塞でコーヒーは飲んで良いの?

脳梗塞でコーヒーは飲んで良いの?

食事制限でコーヒーは飲んでも構わないのか

脳卒中は,脳出血くも膜下出血脳梗塞に分類されます。日本人は欧米人に比べて出血性の脳卒中が多いと言われていますが,それでも脳卒中の約6割は脳梗塞が占めます。 脳梗塞とは脳の血管が突然つまって血流が途絶え、脳の細胞が死んでしまう病気です。早期に適切な治療を受けないと後遺症をきたしたり、死亡してしまう可能性があります。   脳梗塞はさらに3つの病型に分類されます。 脳の中の細い動脈が狭くなり血管が詰まるラクナ梗塞脳の中の比較的太い動脈の血管壁に粥状(アテローム)の肥厚(プラーク)が生じて動脈内腔が狭くなり血 管が詰まるアテローム血栓性梗塞,そして,心臓内にできた血栓などが脳動脈に詰まる心原性脳塞栓があり,発症頻度はほぼ同等です。 脳卒中のリスクを下げる食品として野菜果物チョコレートが,反対に,脳卒中のリスクを上げる食品として赤身の肉が報告されています。 脳卒中のリスクを下げる飲料として紅茶や緑茶が知られています。女性のみですが,甘味炭酸飲料は脳梗塞のリスクを上げ,また,低カロリーの炭酸飲料は脳出血のリスクを上げるという報告もあります。 栄養素のサプリメントでは,葉酸が低摂取者の脳卒中のリスクを下げる可能性があるそうです。食塩は1日5g増加で23%リスクが増加,カリウムは1日1g増加で11%リスクが減少すると報告されていますが,たんぱく質や脂質の摂取量は脳卒中リスクに影響しないようです。 この他,ビタミンD欠乏が高血圧,心血管疾患リスクになること,高食物繊維摂取が血圧,血糖,コレステロールを減少させること,また,全粒穀類やn-3系脂肪酸の摂取が心血管疾患リスクを減らすことなどが知られています。これらは間接的に脳卒中リスク に影響する可能性があるかもしれません。 コーヒー摂取と脳卒中のリスクに関する研究報告が複数あります。2011年のLarssonらによるコホート研究(計11本)のメタ解析では,適度なコーヒー摂取は脳卒中のリスクを下げると報告されています。同様の結果は,2014年のDingらによるコホート研究 (計36本)のメタ解析でも報告されています。1日3~4杯程度のコーヒー摂取が最も脳卒中のリスクを低下させるようです。コーヒーの効果は日本人を対象とした大規模コホート研究でも支持されており,代表的なJPHCスタディによると,コーヒー摂取は,脳出血と脳梗塞との両方のリスクを下げると報告されています。  

脳小血管病

脳小血管病は,脳卒中の危険因子として最近注目されています。脳小血管病は,脳ドックで発見されることの多い病態で,無症候性脳梗塞,大脳白質病変,微小脳出血(脳微小出血)に分類されます。 無症候性脳梗塞は,いわゆるかくれ脳梗塞と呼ばれる,脳の中の小さい脳梗塞です。無症候性脳梗塞は,脳梗塞や認知症の危険因子で,高血圧の方に見られることが多いと言われています。 大 脳 白 質 病 変 は ,磁 気 共 鳴 画 像( m a g n e t i cresonance imaging:MRI)による画像では脳深部に白い影が広がるようなものとして見つけられます。この病態は,脳実質の虚血状態を表していると言われています。脳白質病変も脳卒中や認知症の危険因子で,高血圧の方に見られることが多いと言われています。 微小脳出血は,名前のとおり,脳の中の小さい脳出血です。この病態は,男性,高齢者,高血圧の方に多いと言われています。脳の中に微小脳出血が6つ以上見られる場合,大きな脳出血を起こしやすいと考えられています。 Freedmanらの研究結果から10),コーヒーが脳卒中と関連するならば,コーヒーと,脳卒中の前段階と考えられている病態,すなわち脳小血管病とも関連するのではないかと予測されました。そこで,コーヒー摂取と脳小血管病との関連を検討することにしました。 2013年5月から2014年3月に聖路加国際病院の脳ドックを受けた方を対象に調査を行いました。コーヒーの摂取期間と種類,また,脳卒中の関連因子である喫煙,飲酒,肥満度(BMI),年齢のデータを収集しました。 脳小血管病の検査には,高磁場・高性能のMRI装置で ,脳 の 出 血 性 病 変 の 診 断 に 有 用 な 撮 像 法(T2*-weighted gradient echo)を,また,無症候性脳梗塞と大脳白質の変化を観察できる撮像法(fluid-attenuated inversion recovery:FLAIR)を使い脳ドックの担当医,放射線専門医,神経系専門医が診断しました。脳卒中の既往がある方を除外し合計455名(平均年齢63歳;男性314名,女性141名)を対象に解析しました。コーヒー摂取は,毎日1杯以上飲む(257名),たまに飲む(100名),全く飲まない方も98名となりました。 脳 小 血 管 病 の 中 で ,大 脳 白 質 病 変 が 1 番 多 く(38.9%),続いて微小脳出血(11.4%)と無症候性脳梗塞(11.2%)が同頻度という結果でした。脳卒中の既往がない健康な方にもこうした無症候性の病態がよく見つかります。年齢,診断精度などが所見の有無に影響することもあり,5~10年前より所見有りの数が増えていると実感しています。 コーヒー摂取とそれぞれの脳小血管病との関連を見た結果,微小脳出血が,男性ではコーヒーを飲まない方で,毎日飲む方に比べて多く見られました。 最終的に多変量解析を行った結果,男性では,コーヒーを毎日飲む方で微小脳出血のリスクが統計学的に有意に低いという結果が得られました。一方,女性では,対象人数が少なかったこともあり,コーヒー摂取と微小脳出血との関連は認められませんでした。脳卒中の予測因子である微小脳出血とコーヒーとの関連性を見出した私達の研究は,コーヒーと脳卒中予防研究に新しい知見を加えることになります。  日本人約8万人を対象としたJPHCスタディではコーヒー摂取は,脳卒中全体だけでなく脳梗塞のリスクも低減していましたが,今回の研究でコーヒー摂取と無症候性脳梗塞との関連は認められませんでした。  コーヒーのどのような成分が脳卒中の予防に有効なのかはまだ分かっていません。 コーヒーにはカフェインやポリフェノールが多く含まれています。カフェインは脳関門を通過でき,パーキンソン病での脳細胞の保護因子となるという研究があります。 抗酸化作用のあるビタミンCにも脳卒中リスクの低減作用があると報告されています。抗酸化作用のあるポリフェノールにも注目しています。 コーヒーとお茶は、ともに世界中の人々に飲まれている存在ですが、両方に共通するのが、カフェインとポリフェノールという炎症予防作用と抗酸化作用がある物質を両方含んでいることです。 カフェインやポリフェノールは、脂肪を燃やす働きがあるなど、さまざまな薬理効果を持っているのですが、両方あると相乗効果が出るのです。「カフェインとポリフェノールの相乗効果」と呼ばれます。 コーヒー1杯に含まれるカフェインとポリフェノールは、浅煎りのレギュラーの場合でそれぞれ100mg200mg程度です。緑茶(煎茶)の場合はそれぞれ半分の50mg、100mg 程度となっています。 コーヒーの健康効果は、がん予防や2型糖尿病の改善、脂肪燃焼の予防などいろいろあります。それらの中で、私が今、最も注目しているのが「血液サラサラ効果」です。 コーヒーにはポリフェノールの一種であるクロロゲン酸が多く含まれています。クロロゲン酸は、コーヒーの健康成分として一番知られている存在です。クロロゲン酸は、体に入ると肝臓で代謝されて半分以上がフェルラ酸という成分に変わります。これが血管内で血小板が固まるのを防ぎ、血液をサラサラにします。 脂っこい食事を取ると血液はドロドロになり血小板が活性化して血が固まりやすくなります。これによって血栓ができて血管を塞ぐと、脳梗塞や心筋梗塞などの突然死につながる病気となるわけです。ところが、食事といっしょにコーヒーを飲んでおけば、フェルラ酸が血液をサラサラにしてくれます。    

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