リニア新幹線の巨大利権

リニア新幹線の巨大利権

安倍とそのお仲間によってつくられた巨大利権

大疑獄事件の摘発がなるかと期待されているリニア中央新幹線工事巨額談合事件。
 当初はJR東海の単独事業だったはずが、中から安倍首相の肝いりで政府資金が投入されることになるなど、政治がらみの動きが目立っていたので、国民の多くは「やはり」という感じを強めていた。

しかし、捜査の周辺ではなにやら奇妙な動きが見え隠れする。いったい何が起こっているのか、安倍介入の時期からの推移を追ってみた。

「“悪夢の超特急”リニア中央新幹線」表紙『“悪夢の超特急”リニア中央新幹線』(旬報社刊)で日本ジャーナリスト会議(JCJ)賞(2015年度)を受賞したフリージャーナリストの樫田秀樹さんが、JCJの機関紙『ジャーナリスト』1月25日号に寄稿した文章から、問題の核心を抽出してみる。

 樫田さんは東京地検特捜部の捜査の注目点は「地検が果たして『リニア計画への3兆円の財政投融資』の絵を誰が描いたかまで究明するかどうかにある」と指摘する。談合事件を生んだ根っこはここにあるというのだ。

 JR東海によると、リニアに建設費は9兆円に上る。
 このうち第一期の品川 ― 名古屋間は5・5兆円となる。樫田さんの計算では、ドル箱東海道新幹線の収益をもってきても5.5兆円には3兆円が不足する。借りればいいではないかと多くの人が思う。なにしろJR東海なのだから。ところが2015年度末のJR東海の純資産額は2兆円強しかない。つまり、3兆円借金しようにも担保がないのだ。銀行融資はむずかしい。

グーペ

 しかも、新幹線工事は近年どこも当初予算の倍以上かかっている。そこでどうしているかというと、新幹線の場合、国と自治体が建設費を出し合い、独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構(以下、機構)」が建設し、竣工後にJR各社は機構に毎年「線路使用料」を払う仕組みになっている。

葛西敬之 だが、リニアはJR東海の自己資金でやると、2007年に葛西敬之名誉会長(現・写真)がぶち上げた。さてどうするか。そこで登場するのが安倍首相である。2006年6月、安倍首相の財投による3兆円の支援策を打ち出した。

 安倍政権は「機構」の法改正を行い、財投資金でリニアの工事を発注できるようにした。安倍・葛西は右翼仲間で、葛西は安倍仲良しグループの一員でもある。「機構」は法改正直後から5回に分け、3兆円を無担保、30年据え置きという破格の条件でJR東海に貸し付けたと樫田さんは指摘する。

安倍官邸の例の粛清人事の結果か

 国家が後ろ盾について、税金を投入する仕組みがつくられたのだから、建設費がどこまで積みあがっても、取りそびれはない。大林組、大成建設、清水建設、鹿島というスーパーゼネコンによる巨大利権分捕りあいが、今回のリニア談合事件の背景なのだ。

 特捜の動きが始まった後も奇妙な出来事があった。
 日刊ゲンダイ電子版(2018年1月19日)は、捜査の動きがぱたりと止まり、このままでは国会議員に行き着くどころか談合の追及さえ怪しくなった、という記事を掲載した。同紙はその背景に安倍官邸による検察への人事介入があった、と指摘する。少し長いが引用する。

安倍「特捜部が独占禁止法違反容疑で、鹿島と清水建設の本社を家宅捜索し、強制捜査に乗り出したのが昨年12月18日でした。
実は、そのわずか1週間後の12月26日に、当時の林真琴刑事局長を名古屋高検検事長に転出させる人事案がこっそり閣議決定されたのです」
「林刑事局長と東京地検の森本宏特捜部長のラインでリニア疑惑を徹底追及すると見られていた直後に、林刑事局長が突然、飛ばされた。役職的には栄転とも言えますが、検察内では『林さんは虎の尾を踏んだ』ともっぱらでした。つまり、官邸が『これ以上、手を突っ込むな』と牽制する意味で粛清人事を行ったと見られているのです」

 法務省の黒川弘務事務次官は、同省の官房長時代、大臣室で賄賂の札束を懐に入れたということで問題になった甘利事件を握りつぶして次官の地位を射止めたという人物だけに、あながちうがった話ではない。
 いずれにしろ、安倍のお友達がらみの巨大利権構造だけに、この事件は目が離せない。

 

リニアモーターカー、本当に必要か?

 

 

そもそも、リニア中央新幹線建設はJRが自己資金で行う予定だったはず。それを社会保障の問題がこれだけ取り沙汰され、財源不足だなんだと言い訳ばかりなのに、リニアにはあっさりポンと30兆円……。安倍首相が保育園や介護、子どもの貧困などの国民が直面する生活の問題をいかに軽視しているかがよくわかるというものだ。

 しかも、それだけ公的資金を投入しても、その金が返ってくるのかは甚だ疑問だ。というのも、2013年9月、JR東海の山田佳臣社長(当時)は記者会見で「(リニアは)絶対にペイしない」と公言。国土交通省も「リニアはどこまでいっても赤字です」と市民団体との交渉で語ったという。つまり、赤字必至の事業なのだ。

 さらにリニア建設には、南アルプスの巨大トンネルによる大井川の水量減少、大量に発生する建設残土など、環境への影響も懸念されている。また、南アルプスには中央構造線などの断層があり、今後高い確率で起こるとされている巨大地震が発生した場合のリスクもある。

 採算のみならず、環境破壊や安全面でも疑問視されるリニア計画。にもかかわらず、安倍首相がこれだけ前のめりなのは、自分の”ブレーン”が計画の主導者だからだ。それは、JR東海の名誉会長・葛西敬之氏である。

 

葛西名誉会長といえば、安倍首相をバックアップしてきた経済人による「四季の会」「さくらの会」の中心人物で、第一次安倍政権時代には国家公安委員や教育再生会議委員を歴任してきた。また、NHK会長人事をめぐっても、葛西氏が安倍首相に籾井勝人氏をゴリ押ししたとも言われており、安倍政権に大きな影響力をおよぼしている。

“お友だち”のご機嫌取りのために民間事業が”国策化”されてしまう──。二の句が継げない呆れた話だが、もっと恐ろしいのは、このリニア計画が原発再稼働と密接に関係していることだ。

 興味深い指摘がある。第58回JCJ(日本ジャーナリスト会議)賞を受賞した『”悪夢の超特急”リニア中央新幹線』(旬報社)の著者・樫田秀樹氏は、「世界」(岩波書店)15年2月号で、このように語っている。

「リニアが原発からの電力を使うかどうかは、公式的にはJR東海は何とも言っていません。ただ、JR東海の実質的な最高経営者である葛西氏は繰り返し原発再稼働を求めていますし、実際、リニア実験線で使われる電力は、主に柏崎刈羽原発からの日本初の超高圧送電線によって送られてきました。リニアと原発はセットとの可能性は否定できない」

 この指摘通り、葛西氏は原発事故から間もない2011年5月24日の産経新聞でのインタビューで、「今日の原発は50年に亘る関係者の営々たる努力と数十兆円に上る設備投資の結晶であり、それを簡単に代替できる筈がない」「今回得られた教訓を生かして即応体制を強化しつつ、腹を据えてこれまで通り原子力を利用し続ける以外に日本の活路はない」と断言。JR東海グループの出版社が発行する月刊誌「Wedge」でも、同年6月20日発売の7月号で「それでも原発 動かすしかない」という特集を大々的に組み、原発再稼働の必要性を説いていた。

 参院選で自民党が圧勝すれば、社会保障は捨て置かれ、一方で堂々と公的資金をぶちこんでリニア計画は進んでいくはずだ。だが、その背景には原発再稼働の問題も絡んでいるということを覚えておかなくてはならないだろう。(水井多賀子)

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