米中対決の行方

米中対決の行方

米中対決は最後まで突き進む / 閉幕した中国全人代を総括する

 

キャスター:宮崎正弘・福島香織

■ ニュースPick Up

■ 米中対決は最後まで突き進む

■ 閉幕した中国全人代を総括する

米中は、メディア戦争でドンパチを始めている中、日本の大手メディアは中国共産党に組した報道を続けている。テレビも、新聞も先を見ることなく目先の工作資金に目をとらわれているという情けない状況である。 香港メディア界の大物実業家で、著名な民主活動家の黎智英(ジミー・ライ)氏はブルームバーグテレビジョンで、「われわれにとって唯一の救済策はトランプ大統領による制裁だ」と説明。最も影響が大きい可能性がある最初の動きとして中国高官の銀行口座の凍結を挙げ、「大統領が中国に対する非常に厳しい制裁を週末までに科すことを大変期待している」と述べている。

 

 

新興国が覇権国に取って代わろうとするとき、新旧二国間に危険な緊張が生じる。現代の中国とアメリカの間にも、同じような緊張が存在する。それぞれが困難かつ痛みを伴う行動を起こさなければ、両国の衝突、すなわち戦争は避けられないだろう。猛烈な勢いで成長を遂げる中国は、アメリカの圧倒的優位に挑戦状を突きつけている。このままでは米中両国は、古代ギリシャの歴史家トゥキディデスが指摘した致命的な罠に陥る恐れがある。2500年前のペロポネソス戦争を記録したトゥキディデスは、「アテネの台頭と、それによってスパルタが抱いた不安が、戦争を不可避にした」と書いている。  

李克強首相が共産党に不都合な数字を暴露

  中国の李克強首相は5月28日、全国人民代表大会(全人代)の記者会見で「2019年、中国人の平均年収は3万元(約45万円)だった」と公表した。注目すべきはそれに付け加えて「中国には月収1000元(約1万5000円)の人が6億人もいる」と明かしたことである。   月収1000元ということは、年収が1万2000元(約18万円)にしかならない。この月収では、1キロ30元(約450円)以上もする肉は食べられない。

また、中小都市の1カ月分の家賃にもならないだろう。 李克強首相が発表したのは、共産党にとって明らかに”不都合な数字”だ。 というのも共産党政府は2016年3月、王岐山中央紀律委員会書記(当時)を中心に、第13次5ヶ年計画として、2020年までに「小康社会」を実現するという目標を掲げた。

これは、「ややゆとりのある社会」ということだ。しかし実際、「新型コロナ」の蔓延によって習近平政権は、今年のGDP目標数値さえ打ち出すことができなかった。   この事実上の”敗北宣言”に輪をかけるように、「月収1000元の人々が6億人も存在する」という惨状が、わざわざ公表されたのだ。「小康社会」が、”絵に描いた餅”に終わる公算は、客観的に見てますます高まっている。 李克強首相の暴露は、習近平派への”反撃”だった可能性がある。   共産党政権の経済政策は元来、首相の”専権事項”だったはずだ。

ところが前述の通り、首相でもない王岐山が、第13次5ヶ年計画で「小康社会」を実現するとぶち上げた。李首相からすれば、”越権行為”である。

無論、それを許したのは、習近平主席だろう。   同時に習主席は、かねてより劉鶴副首相を重用してきた。李首相には、ほとんど出番がなかったのである。

こうしたことから李首相は、「習近平派が主導してきた経済政策は失敗している」ことを、暗に周知しようとしているのではないか。 だとすれば当然、李首相には党内で確固たる「反習近平派」の支持があると見るべきだろう。そうでなければ、たとえ首相といえども、やすやすと中国の実態を暴露することはできなかったはずだ。   「反習派」の代表格は江沢民系である「上海閥」に間違いない。習主席と王岐山による「反腐敗運動」で、徹底的に叩きのめされた。習主席らに対する深い怨みは、想像に難くない。   李首相の出身母体である胡錦濤系「共青団」はどうか。

彼らは以前、微妙な立ち位置だった。   2012年11月、当時の胡錦濤主席は辞任する際、「(これ以上)腐敗がはびこれば党が不安定となるリスクが増し、党の統治が崩壊する可能性がある」と党内で訴えた。したがって「共青団」は最初、習主席と王岐山の「反腐敗運動」を支援していたふしがある。  

その時、胡主席は江沢民前主席ら古参幹部に対し、習近平新指導部へ干渉しないよう、涙ながらに訴えたと伝えられる。胡主席は任期時、江沢民元主席らから散々に干渉を受けたため、新指導部には自らが経験した苦労をさせたくなかったのだろう。ところが皮肉にも、それが習主席の”暴走”を招いた。   こうした反省や、現在の習政権の政治を見て、「共青団」も現時点では、「反習派」の一翼を担っているのではないだろうか。   さらに、習主席に近いはずの「紅2代」・「紅3代」(元党幹部の2世・3世)の中にも「反習派」は存在する。   そして各派閥の元老達も、習主席の政治手法─終身制導入や「第2文革」発動等に対し、眉をひそめている。 こうした政権基盤の揺らぎを、李首相の暴露は象徴している。  

宮崎正弘カテゴリの最新記事