韓流ドラマに騙されるな

韓流ドラマに騙されるな

特別番組「韓国と北朝鮮は何を狙っているのか」呉善花 倉山満【チャンネルくらら・3月29日配信】

 

 

 

石平、呉善花 対談

 

南北合作の「韓流ドラマ」に騙されるな

 

金正恩主演、文在寅脚本のロマンス

 米朝首脳会談開催については二転三転しましたが、私は今年2月に行なわれた平昌オリンピックが1つの契機だったと見ています。五輪以降、韓国が北朝鮮のペースに呑み込まれてしまったように思います。呉先生はどうご覧になっていますか。

呉 そもそもは、親北派の文在寅政権の誕生から状況が大きく変わりました。経済的に優位な韓国がいつの間にか北朝鮮に従うかのような構図になってしまい、いまや南が北に呑み込まれてしまう可能性すらあります。韓国の国内世論を見ると、4月27日の南北首脳会談直後、世論調査における文在寅大統領の支持率は80%を超えました。

 民主主義社会のリーダーが、それほど高い支持率を得ること自体が異常ですね

 

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 韓国の左派は文在寅大統領の下に統率が取れているのですが、保守派はいくつかの派閥に分裂していることが大きいでしょう。文在寅政権は統制経済への傾向を強めていますが、これに共産主義・社会主義勢力が力を得て、「北朝鮮化」しつつあります。

とくに驚くべきなのは南北会談以降、韓国で金正恩の人気が急激に高まっていることです。韓国の公共放送MBCが4月29~30日に行なった調査によれば、金正恩を「とても信頼する(17・1%)」と「おおむね信頼する(60・5%)」の回答を合わせると約8割に達しました。民主主義国家の世論が、北の独裁者を認めている。信じられない結果ですよ。

韓国国内では「金正恩は外交上手で国際性がある」など、彼を礼賛する声が聞かれます。金正恩を悪魔のように捉えていた数カ月前までの世論とは打って変わって、北朝鮮の悪口すらいえない空気に変わりつつあります。金正恩の夫人である李雪主氏や妹の金与正氏に対しても、「美人で教養がある」など掌を返したように好意的なイメージで褒め称えています。

有名な韓国の哲学者である金容沃氏は、南北会談時に金正恩を警護していた若いボディーガードを見て「北朝鮮に漲るエネルギーを感じた」と表現しています。よくテレビの報道で流れる、金正恩の乗るベンツの脇で一緒に若者が走る光景が韓国人の脳裏に焼き付いているのでしょう。

私は板門店で南北首脳が出会う様子をテレビで見て、まさに文在寅大統領が脚本を書き、金正恩が主演する「韓流ドラマ」のようだと思いました。映画やテレビドラマの山場のように、和解した南北のトップが手をつないで国境を越え、立ち止まって話し込む。悲恋の男女再会のようなロマンチックな構図です(笑)。

1人の指導者のために2500万人が犠牲に

石 板門店という南北の歴史を象徴する舞台で、主役の金正恩が登場して文在寅と握手するハイライトの場面に拍手喝采している。しかし問題は、両首脳が真剣に南北問題の解決を図ろうとせず、最初から演出ありきだったことです。南北合作の茶番劇に韓国のみならず、世界中がころっと騙されてしまった。

 韓国国民は、すっかり融和ムードに酔いしれていました。まるでシャーマニズム(巫者を仲立ちとして神霊などと心を通わせる原始宗教)に感応したかのように、理性を失ってしまった。しかし南北会談の目的は平和ムードの醸成にすぎず、北朝鮮の核問題について具体的な進展は見られません。

板門店宣言に盛り込まれた「朝鮮半島の完全な非核化」という言葉は、1992年2月の南北首相会談で発効した南北非核化共同宣言ですでに使われていたもので、決して新しいものではない。

金正恩は、世界に南北の平和ムードを示せば、アメリカは迂闊に北朝鮮を攻撃できないことを見越して、「戦争より核保有を認めるほうがましじゃないか」という国際世論の流れをつくろうとしています。文在寅大統領は積極的に金正恩の片棒を担ぎ、北の時間稼ぎに協力しているわけです。

 金正恩は南北融和の演出によって、窮地を脱することができました。1年前の彼はどのような状況だったか。国連から経済制裁を受け、中国との関係は冷え込み、アメリカからは軍事攻撃の恐怖に晒されていた。

国際社会で完全に孤立していた状況を、平昌五輪というチャンスを利用して一機に逆転させました。融和ムードを演出し、最後には自らがヒーローになる。何のコストも払うことなく、難を逃れることができました。トランプ大統領も習近平も、金正恩の演出で動かされた役者にすぎない。

呉 金正恩が韓国民の心をつかんでいるのは、庶民的な言葉遣いが奏功している側面もあります。これはネイティブでないとわからない情緒で、たとえば文在寅大統領が南北会談時に「(北朝鮮の)白頭山まで電車で行きたいですね」と呼び掛けた際、金正恩は「道路の事情が悪いので、飛行機で来てください」と応えました。そう聞くと韓国人は、「金正恩は自国の弱みを内輪(同民族)には素直にさらけ出す、情のある謙虚な人物だ」と思うわけです。

 一家の主に「うちは貧乏ですが、来てくれたお客さまには真心で歓迎します」といわれると、純粋な気持ちになって心が揺さぶられるのと似ていますね。

 そう。さらに、韓国国民の同情も得ることができます。また南北会談では、韓国のソウルから平壌を通って新義州市までを結ぶ南北交通網の整備についても話し合われました。

石 文在寅大統領は一見、平和事業を提案しているようで、じつは韓国の利益を無視して、金正恩に奉仕しているように見えます。大統領という立場を利用して金正恩を平和の天使に仕立て上げ、韓国国民のみならず、アメリカの大統領をも動かす。

南北会談直後、韓国の代表団がホワイトハウスに赴いて板門店会談の内容を説明したことで、トランプ大統領はその場で金正恩との直接対話を決めました。これで韓国や北朝鮮にしてみれば、アメリカの対北軍事攻撃を封じ込めることに成功したわけです。

それでもなお、文在寅大統領が金正恩にあそこまで歩み寄ったことは理解に苦しみます。私は毛沢東独裁体制下の中国で少年時代を過ごしたのでよくわかりますが、1人の指導者が頂点に立ち続けるために、2500万人の北朝鮮国民がどれほど苦しい生活を強いられていることか。国民全体が貧困と恐怖に怯えるなかで、独裁体制が成り立っているわけです。

それを知っているはずの韓国国民の心情が、敵である金正恩に揺らぐことがどうしても理解できない。韓国人は北朝鮮の国民のように悲惨な境遇になりたいのでしょうか。

 韓国人は、いまのところは民族的な興奮に浮かれているのだと思いますね。民族が力を合わせていく時代がやって来たと。金大中政権や盧武鉉政権の時代から、韓国の国民は「北朝鮮が同じ民族であるわれわれに核を使うことはない」と思うようになり、李明、朴槿惠の保守政権を挟んで再び左派政権の文在寅政権が生まれ、従北路線に拍車が掛かっている状況です。

(本記事は、6月9日発売の『Voice』2018年7月号、呉善花氏&石平氏の「『韓流ドラマ』に騙されたアメリカ」を一部抜粋、編集したものです)



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