安倍一強の法則

安倍一強の法則

増税は阻止できるか?

 

 

月刊くらら2月号 2時間でわかる政治経済のルール第3回「増税は阻止できるか?~安倍一強の法則」椿 倉山満【チャンネルくらら・2月17日配信】

 

創価学会・公明党が支える砂上の楼閣

 

安倍政権には、勝利の方程式がある。すなわち、「日銀が金融緩和をする→株価が上がる→支持率が上がる→選挙に勝てる→誰も引きずりおろせない」である。「株価連動政権」と呼ばれるゆえんである。

要は参院選で勝てば良いわけです。野党がグズグズだから、大丈夫だ。そう思っていないでしょうか。倉山満先生によると、安倍一強といえど、それは砂上の楼閣に過ぎないと言います。ちょうど今、沖縄で知事選が行われています。そこにからめつつ、こう指摘します。

 

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このままでは「消費税率35%」になる日がやってくる

 

小黒一正(法政大経済学部教授)

 平成最後の予算が固まった。国の2019年度当初予算(一般会計の歳出総額)は約101兆円となり、過去最大であった18年度の約97兆円(当初予算)を4兆円も上回ることになった。4兆円も膨らむ大きな理由は、増税や景気対策だ。
 もっとも、増税の実現可能性については心配する声もある。消費税率は当初、15年10月に10%に引き上げる予定であったが、これまで、安倍晋三首相は増税を2度も延期したため、本当に今回は増税するか否かについて、疑心暗鬼を生じる国民も一定数いるためだ。
 しかしながら、今回の予算編成では、19年10月の増税を前提として、官邸主導の下、増税ショックを緩和するという「名目」で矢継ぎ早に対策が決定する展開となった。政府が決定した対策を列挙しておこう。
 まず、「社会保障の充実」として、①全ての3~5歳児の幼稚園・保育所・認定こども園の費用を無償化、②0~2歳児の住民税非課税世帯を対象に幼児教育を無償化、③低年金の高齢者に年金生活者支援給付金を支給する。
 また、「低所得者支援」として、④酒類、外食を除く飲食料品と定期購読契約の新聞には税率を8%に据え置く軽減税率を適用、⑤低所得者や0~2歳児の子育て世帯に一定期間使えるプレミアム付き商品券を発行、⑥プレミアム付き商品券は市区町村が発行、プレミアム分は国が財政支援する。
 さらに、「駆け込み需要や反動減の平準化」や「中小・小規模事業者への対策」として、⑦住宅の購入や自動車の保有等につき住宅ローン減税の延長など一定の税制措置を行う、⑧すまい給付金の給付額を最大30万円から50万円に引き上げる、⑨省エネ性・耐震性・バリアフリー性能を満たす住宅の新築・リフォームにポイントを付与、⑩増税前後に事業者が柔軟な価格設定をできるようにガイドラインを整備、⑪中小・小規模の小売店でキャッシュレス(非現金)決済により買い物をした消費者にポイントを還元、⑫マイナンバーカード取得者に一定額のポイントを付与する。
 最後に、「防災や減災、国土強靱(きょうじん)化」として、⑬「3カ年緊急対策」を18年度第2次補正や19年度・20年度当初の各予算で実施するというものだ。
 このうち①・②・④は、17年9月の臨時国会冒頭の記者会見で、安倍首相が衆院解散を表明しつつ、正式に提案した対策である。「社会保障と税の一体改革」における当初計画では、消費税率10%引き上げに伴う税収増約5・6兆円のうち、4兆円程度を財政赤字の削減に充当する予定であった。
ところが、突如、その約半分の約2・4兆円を①・②・④に充当する方針に変更した。内訳は、①・②で約1・4兆円、④で約1兆円である。このほか、③の年金生活者支援給付金や65歳以上の介護保険料の軽減対象拡大等で約1兆円も要する。
 さらに今回の予算編成では、増税ショックの緩和に便乗する形で、⑤~⑬の増税対策が追加となった。政府は対策コストの詳細を公表しておらず、現時点では判断が不可能だが、当初計画で予定していた財政赤字の削減分、約4兆円を超えて、むしろ財政赤字が拡大している可能性もあると考えている。政治的な駆け引きもあり、今回の予算編成では、増税を悲願とする財務省は沈黙を貫く形となったが、これでは何のための増税なのか理解できない。
 例えば、19年度当初予算では、⑪のポイント還元の財源として約3千億円を見積もっているが、還元コストが本当に3千億円で済むのか、筆者は疑念を持つ。また、そもそも、低所得者への支援として、⑤や⑥の対策を追加で実行するならば、当初から多くの経済学が指摘していた通り、高所得層も恩恵を受ける④の「軽減税率」は導入せず、低所得層に集中投下する「給付付き税額控除」を導入する方が望ましい。
 また、⑦や⑩の対策は筆者も必要に思うが、⑧・⑨・⑪~⑬の対策は増税対策とは直接関係ないものではないか。むしろ、これらの対策の中には増税ショックを増幅するリスクがあるものも存在する。
 全てについて考察はできないため、以下では、⑪の「キャッシュレス決済でのポイント還元」について簡単に考察してみよう。
 まず、キャッシュレス決済は、第4次産業革命の鍵を握るエンジンの一つで、ビッグデータなどの利活用に向けた成長戦略とも深く関係する。だが、現金信仰の強い日本ではなかなか進まない。
 実際、経産省の資料「キャッシュレスの現状と推進」(17年8月)によると、民間最終消費支出に占めるキャッシュレス決済額の割合は、08年の約12%から、16年で20%にまで増加したが、米国や中国、韓国と比較すると、その半分以下の利用しかない。例えば、15年では、米国が41%、中国が55%、韓国が54%も決済で利用しているが、日本は18%しかない。早急な対策が必要だ。
ポイント還元の期間は、「1年」から「増税実施から2020年夏の東京五輪前の9カ月」に短縮されているが、これは増税ショックを増幅するリスクがある。その理由は以下の通りだ。
 まず、キャッシュレス決済の対象につき、ポイント還元をする前の消費税率の推移は、図表の実線の通り、19年10月以前は8%、それ以降は10%であった。また、当初のプランは、19年10月から1年間という期限で、増税分2%のポイント還元を行うというもので、消費税率の推移は、図表の点線の通り、20年10月以前は8%、それ以降は10%になる。
他方、最新のプランは、19年10月から20年夏の東京五輪前の9カ月間という期限で、5%のポイント還元を行うというもので、消費税率の推移は、図表の太線の通り、19年10月以前は8%、19年10月から20年夏までの9カ月間は5%、20年夏以降は10%になる。
当初のプラン(点線)は、キャッシュレス決済につき、増税(消費税率8%→10%)の時期を19年10月から20年10月に延期する政策と理論的に同等だ。また、最新プラン(太線)は、19年10月から20年夏までの9カ月間、一時的に減税(消費税率8%→5%)を行い、20年夏から増税(消費税率5%→10%)を行う政策と理論的に同等である。
 すなわち、実線や点線の増税幅は2%だが、最新プランでは、一時的な減税によって増税幅が2%から5%に上昇しており、増税の反動減を増幅するリスクがある。日本経済では、過去に5%も消費税率を引き上げた経験はない。これでは、増税の反動減対策が切れたときのために、その反動減対策が必要になるという本末転倒なものに陥る可能性が高く、ポイント還元の幅を見直す必要があろう。19年10月以降、ポイント還元の幅(5%)を2カ月ごとに1%ずつ縮小し、10カ月間でゼロにする政策に変更してはどうだろう。
 なお、ポイント還元は比較的その恩恵が中高所得階層に集中するため、公平性を損なうという指摘も多いが、それは対象をクレジットカード決済のみに限定する場合であり、電子マネーやQR決済も対象とするならば、Suica(スイカ)やスマートフォンの保有率をみても、低所得層なども一定の恩恵を受けられる可能性がある。
 ところで、①から⑬の対策のうち、ポイント還元などは一時的な税収減で済むが、中長期的な観点で財政再建に最も深刻な影響を及ぼすのは、④(軽減税率の導入)だ。これまで、政府や財務省は、社会保障の安定財源として消費税を念頭に置き、財政再建を進めてきたが、軽減税率を導入する場合、もはや消費税のみで社会保障費の伸びを賄うのは不可能となる。
 筆者の試算では、消費税率を10%に引き上げても、財政の安定化には、消費税率を最終的に30%程度まで引き上げる必要性がある。だが、これは軽減税率を導入しないケースでの簡易試算で、19年10月の増税で軽減税率を導入すると約1兆円の税収が失われるため、その場合、最終的な消費税率は35%を超えてしまう。
 このため、軽減税率は取りやめ、低所得者対策は給付付き税額控除で対応することが望ましい。だが、軽減税率を残すならば、資産課税の強化といった新たな財源を含め、消費税10%以後の社会保障や税制のあり方について、今から早急な検討が必要となろう。

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