中央対外連絡部

中国の対日工作機関は網の目のように広がり、日本の中枢に浸透している。最も知られる情報機関は、国務院(中国政府)に所属する「国家安全部」。詳しくは後述するが、ここから様々な組織に「工作員」が潜り込んでいる。
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中国共産党直属の「中央対外連絡部」は党の外交を推進する機関だが、実質的には対外工作機関として、日本の政治家とのパイプ作りなどに勤しむ。日本国内における中国の工作活動の拠点となるのが、東京都港区の一等地に居を構える駐日中国大使館だ。大使館トップである程永華・駐日大使は創価大学に留学経験がある。産経新聞外信部次長の矢板明夫氏が語る。
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「2010年の就任以来、7年を超える職務は歴代最長です。程大使の公明党人脈を生かして、自公政権に影響力を及ぼすことを習近平が期待しているからです」
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幅広い対日人脈を誇る程大使のもと、大使館員は日々様々な工作を行う。
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「中国の外交官は日本の政界に深く食い込み、副大臣、大臣経験者クラスとサシで食事します。彼らは外交力を武器に東京でのウイグル会議やダライ・ラマ訪日など、中国の不利益になる日本の動きを阻止すべく奔走します」(矢板氏)
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これらは言わば「オモテ」の活動だが、大使館には「ウラ」の活動もある。
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200人以上と言われる大使館常駐スタッフは日本の外務省にあたる「国務院外交部」に所属する者だけではない。前述した国家安全部は、参事官や書記官などの肩書で中国大使館に要員を送り、日本の警察庁にあたる「公安部」も自前の人員を配置する。
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こうした“出向組”は外交部の人間より権力を持ち、独自の情報活動を進める。“出向組”は意外な組織にも潜んでいる。
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「国家安全部や人民解放軍からの出向者は、人民日報や新華社など、日本に支局を置く多くの中国メディアに潜り込んで働いています。記事を書く者も、メディアの仕事をまったくしない者もいます」(中国メディアに詳しいジャーナリスト)
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彼らはメディア関係者として様々な立場の日本人と会って情報を収集する。防衛省のインテリジェンス担当者が身分を偽ってNHKの北京支局に勤務するような“禁じ手”だが、これが現実なのだ。情報史研究家の柏原竜一氏は言う。
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「中国は情報活動の重点をプロパガンダに移している。世界中で進める中国の拠点づくりや日本での土地買い占めなど、長期に及ぶ“侵略”を正当化するための宣伝工作に注力しています。それに対して日本はあまりに無防備。このままでは日本を含め、世界は中国のものになるでしょう」
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もはや隠されることもなくなった「中国の野望」を直視しなければならない。
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※SAPIO2017年11・12月号

中国は、科学立国の建設のためには、我が国からの技術移転が必要不可欠と認識しており、先端科学技術の習得のため、多数の学者、技術者、留学生、代表団等を我が国に派遣し、多面的かつ活発な情報収集活動を行っているものとみられます。また、これらの目的で来日した中国人、在日中国大使館員等を介して、我が国の技術者等に対する幅広い工作を活発に行っており、我が国からの技術移転の拡大を図っているものとみられます。
しかも、中国の情報収集活動は極めて巧妙であり、多数の中国人が、断片的で些末であると思われる情報を収集していることが多いため、情報収集活動が行われていることが認識されにくいという特徴があるとみられます。
警察は、平素から情報収集に努めるとともに、違法行為に対しては、厳正な取締りを行うこととしています。

① 汪養然事件
(1976年(昭和51年)警視庁)
香港において貿易商社3社を経営し、手広く中国貿易を行っていた香港在住中国人、汪養然は、1971年(46年)ころ、中国情報機関員から、「香港において中国と取引する中国人業者は、祖国の建設と祖国防衛に協力する義務がある」と迫られ、中国との貿易取引を継続する見返りとして、我が国において軍事・産業技術等の情報収集活動を行うよう指示されました。以後、汪養然は、貿易業務を装って頻繁に来日し、内妻宅を活動拠点にして日本人協力者数人を利用しながら、中ソ国境地図等の旧ソ連関係情報、外国の航空機エンジン等の軍事関係情報、我が国の政治・経済・産業技術に関する情報等の幅広い情報収集活動を行っていた事件です。

② 横田基地中ソスパイ事件
(1987年(昭和62年)警視庁)

在日旧ソ連大使館員の工作を受けた中国人の男と、中国公司関係者から工作を受けた親中団体幹部が、在日米軍横田基地従業員及び軍事評論家らと共に、約8年間にわたり、米空軍戦闘機や輸送機のテクニカル・オーダー(技術指示書)等の在日米空軍の資料を窃取し、多額の報酬を得て旧ソ連及び中国に売却していた諜報事件です。親中団体幹部は、中国人の男からテクニカル・オーダーを購入する話を持ち掛けられ、訪中の際に中国公司関係者にテクニカル・オーダーの一覧を渡し、1980年(55年)ころから、訪中の都度、中国人の男から買い取ったテクニカル・オーダーを中国に売却していた事件です。
この事件では、中国人の男の自宅から諜報通信受信用タイムテーブル、マイクロフィルム等が発見されています。

 

北の核開発

 

米国政府は、北朝鮮の銀行と取引がある中国企業(丹東鴻祥実業発展有限公司)とその董事長(理事長)の馬暁紅(女性)ら4人の米国内資産を凍結すると発表した。同時に、オバマ政権は同社との取引を禁じる制裁を行うという。
 現在、中国国内では、遼寧鴻祥実業集団の1つ、丹東鴻祥実業発展有限公司の責任者、馬暁紅が「重大な経済犯罪」があったとして、中国当局から取り調べを受けている。同公司が、北朝鮮へ核開発物質の一部(酸化アルミニウム等)を輸出したという容疑であった。
 これは、ワシントンが、これ以上、北朝鮮に核開発を進められたくないという要望に対し、北京が応えたものである。
 実は、馬暁紅が、何者かに注目されていた。単なる一介の女性実業家が、北朝鮮と核関連物質を含む貿易を行うというのは、あまりに不自然だった。
 当然、馬暁紅のバックには、ある組織や多大な影響力を持つ党最高幹部の存在が疑われていた。一説には、馬暁紅と北朝鮮の張成沢(金正恩党委員長の叔母の夫。2013年12月、金委員長に粛清されている)との間には、太い“パイプ”があったと言われる。
どうやら米オバマ政権は、馬暁紅を中国共産党中央対外連絡部(以下、中連部)に所属する特務だとほぼ断定した模様である。
 一体、中連部とは何か。中国共産党中央の直属機関で、実に謎の多い部署である。
 一般に、中国外交部(外務省に相当)は正式な国家同士の関係を取り扱う(ただし、外交部の権限は弱い)。ところが、中連部は、相手国の与党だけでなく、野党や別組織との関係をも模索する。中連部は、相手国の懐に飛び込んで工作する。
 表舞台では、外交部が活躍するが、裏では中連部が暗躍している。後者は、インテリジェンス機関(秘密情報機関)としても機能していると考えられる。
 また、中連部は、一部外交部に似て、世界の地域をいくつにも分け、調査研究している。
 例えば、第1局(アジア)、第2局(アジア)、第3局(西アジア・北アフリカ)、第4局(アフリカ)、第5局(ラテンアメリカ)、第6局(東欧・中央アジア)、第7局(アメリカ大陸)、第8局(ヨーロッパ)となっている。他にも別局が存在する。
 昨年(2015年)11月、長年務めてきた王家瑞(吉林省出身)中連部部長が、宋涛(江蘇省出身だが、長らく福建省で働き、その後、外交官になった)へ代わった。
 習近平主席は、北朝鮮と関係が深い王家瑞を中連部部長から政治協商会議副主席へ転出させ、自分の派閥に近い宋涛を同部長に据えたのである。同様に、今年7月、習主席は中連部の大幅な人事異動を行った。
 もともと中連部は、江沢民系(「上海閥」)の曽紅慶(元国家副主席)、周永康(無期懲役)、張徳江(現、政治局常務委員)、劉雲山(同)らの影響力が強かった。そこで、習近平主席は中連部にメスを入れる事によって、「上海閥」の北朝鮮への影響力を弱めようした。
 実際、周永康は、金正日・金正恩父子と関係が深かった。他方、周永康の部下に、李峰(遼寧省人民代表常務委員会副主任、遼寧省政法委員会書記)がいた。だが、今年9月18日、李峰は突然、失職している。
 よく知られているように、今年5月6日から9日まで、北朝鮮は朝鮮労働党第7回大会を行った。その後、同月16日、北京の中国駐在朝鮮大使館での「第7回朝鮮労働党大会開催祝賀行事」が催されている。
 しかし、その際、北朝鮮は、すでに中連部部長を辞めていた王家瑞だけを招いた。金正恩党委員長が「上海閥」に近い王家瑞だけを特別扱いにしたのである。
 ところで、中国核工業集団公司(1999年に創立された中央企業。前身は中国第2機械工業部・核工業部と中国核工業総公司)の人間が明らかにした話によれば、北朝鮮の核開発技術員は、ずっと中国国内で訓練を受けているという。核の最新技術は、中国由来のモノと考えられる。
 また、中国(旧瀋陽軍区=現、北部戦区)は北朝鮮の核実験の原料と技術、先端技術員をコントロールしているばかりか、一部の北の実験を中国の核基地で秘密裏に完成させたという。
 もし、これらが事実ならば、まさに中朝関係は複雑怪奇と言わざるを得ない。

永田町が政局に揺れ、国全体が北朝鮮のミサイルに緊張感を高めるなか、沖縄県・那覇を訪ねる謎の一行がいた。その名は中国国際友好連絡会(友連会)。表向きは日中友好を謳う。だが、実態は対日工作活動の一翼を担っているとされる。

9月4日、北京からやってきた友連会の一行4名が、沖縄県庁6階の応接室に翁長雄志知事を訪ねた。今回、訪日団長を務めた辛旗副会長は翁長知事に要請した。

「ぜひ北京を訪れてほしい。私の大学の同級生が故宮博物院の館長ですので、招待したいと思っています。また、私の娘も学芸員です。彼女は、昨年沖縄を訪れて、琉球王朝を研究しているので交流したい」

だが、友連会のいう「交流」の本当の狙いは、沖縄と日本本土との間に楔を打つことにある。基地問題を背景に沖縄では日本政府への不満が高まっているが、友連会の中にそうした気運を利用しようという動きがある。事実、2012年8月、中国の友連会と「交流」していた日本の日中友好団体である、沖縄・中国友好協会が主催したセミナーでの議論をもとにまとめられた文書には、尖閣領有権問題の処方箋として、短期的に「領有権の棚上げ」を行い、その上で「政府と沖縄との間で、尖閣の土地の賃貸借契約を締結」し、沖縄に「尖閣の管理を委託」することを目指す、といった内容が書かれていた。

 このセミナーが講師として招いたのは、清華大学の劉江永教授。中国きっての日中関係の研究者として知られ、友連会の理事でもあった──。ジャーナリストの竹中明洋氏がレポートする。

* * *
友連会の活動は沖縄だけにとどまらない。今年9月、前述の沖縄訪問後、東京に移動し、自衛隊の将官クラスOBからなる「中国政経懇談会(中政懇)」のメンバーと昼食を共にした。

中政懇とは、日中国交正常化から4年後の1976年に中国側の要望で設立された団体だ。毎年6月に友連会の招きで将官OBのメンバーらが北京を訪問し、中国の退役軍人らとのフォーラムを重ねてきた。

今年で40回目。日中関係が悪化する中で、両国の軍事関係者がチャンネルを維持することについて、危機回避のメカニズムとしての意義を評価する声がある一方で、OBといえども数年前まで自衛隊中枢にいたメンバーが参加することに情報流出への懸念も少なくない。

「OBを通して現職に影響力を行使されることが懸念されます。さらに中国の情報収集は、ロシアが得意とするように金銭で協力者に仕立て上げて秘密文書を入手するやり方ではなく、接触を何度も繰り返し人間関係を構築しながら会話の中で情報を得ていくという息の長いもの。中政懇と友連会のフォーラムがまさにそうした場になっていないか」(防衛省関係者)

今年6月19日に北京で開かれたフォーラムでも、中国側は「(日本は)北朝鮮のミサイル関連施設を先制攻撃する意志があるのか」「あるいは東シナ海で日中の緊張が続くなか自衛隊の現場指揮官には具体的にどのような権限が付与されているのか」など自衛隊の作戦遂行に関わる情報を聞き出そうとする質問が目立ったという。

9月上旬の東京滞在中、友連会の一行は、外務省の飯倉公館で河野太郎外務大臣とも会っている。

儀礼的なやりとりが交わされただけのようだが、日本外交のトップが対日工作機関と疑われる一団と面会しただけでも、憂慮すべき事態ではないか。北朝鮮有事に対し日米と中国の足並みが揃わぬなか、外交の最前に立つ河野大臣は日本側のキーマンであることは間違いない。

河野大臣に友連会との面会について尋ねると、「諸外国から来日する様々な関係者との間で積極的に意見交換を行っており、9月8日にご指摘の中国国際友好連絡会の表敬を受けたが、先方とのやりとり一つ一つについて、お答えすることは差し控えたい」(外務省国内広報室)とのことだった。

また、翁長知事からは、「国交正常化45周年、そして沖縄県と福建省との間で友好県締結20周年ということで来庁された。こちらも感謝の意をお伝えしました。(中国と沖縄は)歴史的なつながりが深いので、交流を継続していくことが大事だと考えています」(沖縄県庁知事公室広報課)との回答を得た。

日本国内で何の憚りもなく活動する彼らには政府として、もっと注意を払うべきだろう。

●たけなか・あきひろ/1973年山口県生まれ。北海道大学卒業、東京大学大学院修士課程中退、ロシア・サンクトペテルブルク大学留学。在ウズベキスタン日本大使館専門調査員、NHK記者、衆議院議員秘書、「週刊文春」記者などを経てフリーランスに。著書に『沖縄を売った男』。

※SAPIO2017年11・12月号


中国の対日工作機関は網の目のように広がり、日本の中枢に浸透している。最も知られる情報機関は、国務院(中国政府)に所属する「国家安全部」。詳しくは後述するが、ここから様々な組織に「工作員」が潜り込んでいる。

中国共産党直属の「中央対外連絡部」は党の外交を推進する機関だが、実質的には対外工作機関として、日本の政治家とのパイプ作りなどに勤しむ。日本国内における中国の工作活動の拠点となるのが、東京都港区の一等地に居を構える駐日中国大使館だ。大使館トップである程永華・駐日大使は創価大学に留学経験がある。産経新聞外信部次長の矢板明夫氏が語る。

「2010年の就任以来、7年を超える職務は歴代最長です。程大使の公明党人脈を生かして、自公政権に影響力を及ぼすことを習近平が期待しているからです」

幅広い対日人脈を誇る程大使のもと、大使館員は日々様々な工作を行う。

「中国の外交官は日本の政界に深く食い込み、副大臣、大臣経験者クラスとサシで食事します。彼らは外交力を武器に東京でのウイグル会議やダライ・ラマ訪日など、中国の不利益になる日本の動きを阻止すべく奔走します」(

これらは言わば「オモテ」の活動だが、大使館には「ウラ」の活動もある。

200人以上と言われる大使館常駐スタッフは日本の外務省にあたる「国務院外交部」に所属する者だけではない。前述した国家安全部は、参事官や書記官などの肩書で中国大使館に要員を送り、日本の警察庁にあたる「公安部」も自前の人員を配置する。

こうした“出向組”は外交部の人間より権力を持ち、独自の情報活動を進める。“出向組”は意外な組織にも潜んでいる。

「国家安全部や人民解放軍からの出向者は、人民日報や新華社など、日本に支局を置く多くの中国メディアに潜り込んで働いています。記事を書く者も、メディアの仕事をまったくしない者もいます」(中国メディアに詳しいジャーナリスト)彼らはメディア関係者として様々な立場の日本人と会って情報を収集する。防衛省のインテリジェンス担当者が身分を偽ってNHKの北京支局に勤務するような“禁じ手”だが、これが現実なのだ。情報史研究家の柏原竜一氏は言う。

中国は情報活動の重点をプロパガンダに移している。世界中で進める中国の拠点づくりや日本での土地買い占めなど、長期に及ぶ“侵略”を正当化するための宣伝工作に注力しています。それに対して日本はあまりに無防備。このままでは日本を含め、世界は中国のものになるでしょう」

もはや隠されることもなくなった「中国の野望」を直視しなければならない。

矢板氏)

 ※SAPIO2017年11・12月号


世界覇権がイギリス(ロスチャイルド)からアメリカ(ロックフェラー)へ

ロックフェラーによるアジア方面の工作は、主にIPR(太平洋問題調査会)を通じて行われた。IPRは、ロックフェラーの情報工作機関であると共に、ソ連(スターリン)の謀略機関でもあった。資金もロックフェラーのチェースマンハッタン銀行から出ていた。ここから米国務省への人材も供給されており、中国工作・毛沢東支援のルートとなった。
IPRは上層部が全部ソ連スパイであったというとんでもない組織であり、ゾルゲ諜報団に連なる尾崎秀美、西園寺公一、牛場友彦、平野義太郎、角田順などが情報収集や意見交換の場としていた。ロックフェラーの対日工作の目的は、日本を中国大陸とインドシナに誘い込み、ロスチャイルドの縄張りに侵攻させるとともに対米戦争に誘い込み、アメリカを第2次大戦に参加させる口実をつくるためだったと考えられる。

日本はアメリカとソ連という超大国から挟まれる形で巨大な外圧を受けるようになった。昭和初期から日本はおかしくなったという人は多いが、このような二大超大国から挟まれ、工作をうけるという凄まじい外圧状況により日本の内的な変化がもたらされた。

この外圧変化はまた、世界覇権がイギリス(ロスチャイルド)からアメリカ(ロックフェラー)への移行に伴う変化でもあった。

まず日英同盟解消から始まる。日本はヨーロッパ・ロスチャイルド系との連携を失う。その後日本国内では、次々と事件がおき、政治家(それまで主導権を握っていたロスチャイルド系)が殺され、世界恐慌の波及も相まって、軍部が力を握り戦争を拡大していく。IPRの狙い・世界戦略は、日本を対中戦争に追い込み、南進策(ソ連ではなくイギリスやフランスの縄張りに攻め込ませる)をとらせるにはどうするかということだった。日本に対する工作は、日本人の協力者とゾルゲを始めとするスパイ網から成立していた。対日工作資金は、政治家・右翼・左翼に流れた。


入管法違反の推移


昭和20年代から30年代にかけては、韓国からの不法入国事件が最も多く、摘発された事件の大半を占め、特に21年には朝鮮半島からの不法入国者が後を絶たず、1万7、000人以上を検挙しました。40年代に入って、韓国以外の東南アジア諸国等からの短期入国者による資格外活動と不法残留事件が増加し始め、50年代以降も同傾向で推移しています。


特に、60年代からは、いわゆるバブル経済期において、国内における労働市場の逼迫とそれに伴う国内賃金の上昇を背景として、多数の外国人が就労を目的として来日し、その流れは、最近における我が国の厳しい経済情勢にもかかわらず、依然として来日を望む外国人が後を絶たない状況にあります。
外国人入国者数の推移をみると、戦後の我が国の復興、国際交流の活発化、国際航空路線の新規開設・増便等に伴って、法務省が統計を取り始めた25年には約1万8、000人であったのが、53年には100万人、59年には200万人、平成2年には300万人、8年には400万人、12年には500万人を突破しています。

 こうした国際化の進展の中、法務省入国管理局の電算統計に基づく推計によれば、我が国の不法残留者数は、統計を取り始めた平成2年には10万6、497人であったのが、4年には20万人を超え、5年の29万8、646人をピークに若干の減少傾向を示しつつも、15年1月1日現在22万552人と、依然として20万人以上の大量の不法残留者が滞留しています(図1参照)。
加えて、正規の入国ではなく、密航等の手段により不法に入国し、そのまま本邦に在留する不法在留者が計上不可能であることから、不法滞在者は相当な数に上るとみられます。
これら不法滞在者のほとんどは不法に就労しているとみられますが、不法就労よりも効率的に利益を得る手段として犯罪に手を染める者もおり、さらに、地縁、血縁等によって我が国国内で犯罪グループを形成し、あるいは我が国の暴力団や外国に本拠を置く国際犯罪組織と連携を図るなど、大量の不法滞在者の存在は来日外国人による各種犯罪の温床になっていると指摘され、我が国の治安に重大な影響を与えています。
こうした情勢の下、警察における入管法違反の検挙人員は、昭和20年代から30年代前半までは1、000人台、40年代から50年代までは1、000人以下で推移していたのに対し、60年代以降急激に増加し、平成15年には、9、579人を検挙しました(図2参照)。
図1:不法残留者数の推移図2:入管法違反送致件数・人員の推移

密航事件については、前述したとおり、昭和21年には朝鮮半島からの不法入国者が後を絶たず、1万7、000人以上を検挙しました。また25年の朝鮮動乱とこれに続く韓国の不安定な国内情勢により、30年代前半までは、韓国からの密航事犯が多く、おおむね50年ころまで続いていたものの、韓国経済の復興、日韓国交の正常化等によって減少しました。
これと相前後して、インドシナ難民であるボートピープルの流出が始まり、その受け入れを1万人枠を超えて推進した結果、これに乗じた偽装難民事件がみられるようになりました。
平成元年5月、長崎県に107人の偽装ボートピープルを乗せた船が漂着したのを皮切りに、偽装難民事件が多発し、同年10月までに22件2、804人が漂着し、調査の結果、これらのほとんどは難民を偽装した中国人又は中国に居住するベトナム華僑であることが分かり、不法入国者として退去強制されました。
警察庁では、2年から、警察及び海上保安庁が検挙した集団密航事件の検挙件数・人員の統計を取り始め、2年には1件15人の検挙でしたが、4年には急増し、9年には73件1、360人を検挙しました。
集団密航者の大半は中国人で、こうした集団密航事件の多くには「蛇頭」と呼ばれる中国の密航請負組織の介在がみられました。
密航請負組織は、相当の請負料を目的として、送り出し国での密航者の勧誘、引率、搬送、船舶や偽造旅券の調達、行き先国での密航者の隠匿、不法就労の斡旋等を分業により行い、集団密航事件多発の大きな要因となっています。また、請負料の取り立てをめぐって、殺人等の凶悪事件を引き起こしたり、受入組織を我が国国内に構築して広域的に活動し、一部では暴力団員との連携もみられました。
船舶による集団密航事件は、9年をピークに減少傾向となり、密航用に仕立てた船舶で大量の密航者を搬送する手法は影を潜め、より発見されにくい少人数による密航、コンテナに潜伏する密航等が中心となりつつあり、犯行の巧妙化がみられます。
一方、偽変造旅券を使用した不法入国事案については、昭和50年以前にはほとんどみられませんでしたが、最近では、偽変造技術の発達等により、航空機を利用して入国審査時に偽変造旅券の行使を看破されずに不法入国し、不法在留する外国人の検挙が急増する傾向にあります。昭和40年代に入り、東南アジア諸国等からの短期入国者による不法就労活動と不法残留事件が増加し始めました。
また、外国人に対する技術指導を日本で効果的に行う必要性から56年に始まった「研修制度」、58年に政府の基本方針として提唱された「留学生受入れ10万人計画」等の各種制度・在留資格を専ら本邦での就労を目的に入国の手段として悪用し、不法に就労している実態が顕在化し、不法就労問題が深刻化しました。これを受けて平成4年、警察庁、法務省、厚生労働省の3省庁は、「不法就労外国人対策等関係局長連絡会議」、「不法就労外国人対策等協議会」を発足させ、定期的に情報交換を行い、合同摘発の実施等不法就労対策に資する具体的取組みを行っています。
不法滞在を助長する文書偽造事件等については、日本人との婚姻関係を偽装する偽装結婚事案、中国残留孤児の家族を偽装する事案、旅券や外国人登録証明書を偽造して売買する「偽造工場」事案、在留資格認定証明書の交付申請書類の虚偽申請事案、不法滞在外国人が我が国の旅券を不正に取得する事案、犯罪収益等を不正に送金する「地下銀行」事案等を相次いで摘発した結果、その多くが暴力団や各種偽造ブローカー等が営利目的で組織的に引き起こしたものでした。
とりわけ、最近、偽変造旅券を使用して入国し不法に在留していた外国人の検挙事案と正規の在留資格を取得して入国してきた研修生や留学・就学生等が失踪し不法就労している事案が多発しており、それらの背後には、偽造ブローカー、国外送り出し組織、国内での引き抜き・職業斡旋ブローカー等犯罪組織の暗躍がみられました。

【事例1】

埼玉県警察では、東京入国管理局と連携し、平成16年3月、東京都内で日本語学校を経営していた会社役員を有印私文書偽造・同行使罪他8件で送致するとともに、関連被疑者9人を有印公文書偽造等で検挙し、25人を出入国管理及び難民認定法違反(不法残留等)で入管収容しました。
本件は、同会社役員が、偽造文書を行使して大量の中国人を違法に呼び寄せていたもので、その手口としては、就学生を偽装、稼働先を偽装、家族滞在を偽装、短期商用ビザの不正取得、偽装結婚等多岐にわたり、現在まで判明しているだけで1、400余人の不法入国(企図者を含む)、在留に関与したことが確認されています。

【事例2】

愛知県警察では、平成16年5月、岐阜県岐阜市所在の偽造工場を摘発し、パソコン等の偽造機材等約400点を押収するとともに、主犯格の中国人男性ほか偽造組織関係者の中国人男女7人を検挙しました。
本件では、全国で初めて、外国人登録証明書の偽造用ホログラムシール、プラスチック板を外国人登録証明書の大きさに切り取る型抜き器、偽造用素材集として全国93自治体の公印の印影や運転免許証等の様式を記録した電磁記録媒体が押収されました。なお、偽造された外国人登録証明書と旅券は、セットで3万5、000円から5万円で販売されていました。

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